東京・宮坂学副知事が語る「行政だからできる」スタートアップ支援

提供=東京都

東京で起業し、海外展開で事業を成長させ、いずれは日本に戻り、先輩経営者として次世代の起業家創出を助力する。

サケの母川への回帰になぞらえた、「キングサーモンプロジェクト(King Salmon Project)」と名付けられたスタートアップ支援事業が、東京都によって進められている。

プロジェクトは2019年からスタートしており、東京が抱えるさまざまな社会課題の解決手段となる、以下のスタートアップ4社が第1期の支援先企業として2020年に採択されている。

イノフィス(千代田区)
人工筋肉を活用した腰補助用のアシストスーツを開発

トリプルダブリュージャパン(港区)
膀胱内の尿の溜まり具合を計測する世界初の排泄予測ウェアラブルデバイスを開発

WAmazing(港区)
訪日外国人観光客向けに観光情報閲覧や各種予約手配等が可能なプラットフォームアプリを運営

Holoeyes(港区)
CTスキャンやMRIから生成した3DデータをVR化して、手術の検討、トレーニング、教育等へ活用可能なサービスを提供

東京都は、これらの企業に対して実証実験の場の提供や公共調達、海外販路拡大に向けた戦略立案、水平展開を支援する。

PMFの達成に都政を活用する


5月18日に行われた第1期の支援先企業の成果発表会では、東京都の宮坂学副都知事が登壇して、キングサーモンプロジェクトの存在意義について、次のように語った。

「日本に資本主義が勃興した明治期、海外の技術を取り入れながら、渋沢栄一などが一斉に企業をつくりました。戦後も、戦争に負けて財閥解体などが起き、多くの新しい会社が生まれました。この2つのタイミングで企業のシャッフルがありましたが、IT革命やデジタル時代と言われている現代、それが起きていない。

いまの東京を支えているのは、戦後すぐにできた企業ばかりです。つまり、いまスタートアップが生まれてこなければ、数十年後の未来の世代の人たちが困ることになるんです」

この後に続いて、宮坂副知事と4社の代表によるトークセッションも行われたが、行政を活用するメリットが次々と飛び出した。

なかでもHoloeyesの事業責任者である中村和弥氏は、都を介すことで参入障壁の課題をクリアできたと語る。

「新しいプロダクトを広めていくときには、まずニッチな市場で商品やサービスが市場に適切に受け入れられている状態であるプロダクトマーケットフィット(Product Market Fit=PMF)が達成されていることが大事です。PMFには、ユーザーのフィードバックが必要ですが、われわれの場合には医師のほうから細かく感想や疑問点を教えてもらうのは難しいという課題がありました。

それが、このプロジェクトを通すことで、病院からのフィードバックを割合すんなり得ることができ、医療機器としての効果・効能の数値化も実施できました。結果、2020年度から2021年度にかけ、売り上げを4倍に伸ばすことになりました」

それに応えるかたちで宮坂副知事も次のように続けた。

「都の行政は国と違い、教育、医療、スポーツ、アートなどあらゆる領域の現場を持っています。すべての現場において、PMFが達成できる環境をつくっていく、それが実現できるのがこのプロジェクトなのだなと、私たちも学びになりました」
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文=露原直人

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