さらに、イベント終了後、宮坂副知事に今後のキングサーモンプロジェクトの支援の方向性について詳しく聞いた。
このところ、VC(ベンチャーキャピタル)など民間の支援組織も次々と生まれ、イグジットした起業家が個人でスタートアップに投資を行うケースも目立っている。そこで行政として重要視するのは「息の長い支援」だと宮坂副知事は言う。
「行政はファンドをつくりたがるのですが、民間でもたくさん立ち上がっているので、スタートアップも困っていないと思うのです。そこで行政としてできるのはディープテック企業などへの長期的な支援なのです。
ゴールデンウィーク中に、Netflixで『リターン・トゥ・スペース』というイーロン・マスクのドキュメンタリーを観ていたのですが、NASAとアメリカ政府が行政発注を行うことでスペースXを徹底的に支えているのです。スペースXだけで頑張っていたら、途中でプロジェクトも潰れていたかもしれません。だから、時間がかかってもやるべき事業は、行政で調達環境をつくっていかなければいけない。
日本のGDPの2〜3割は、公共事業が生み出しているんです。しかし、発注がどうしても大企業にいきがちなので、そこにスタートアップ枠をつくっていくことが必要だと思います」
行政というと、どうしてもスピード感が足りない、変化が起きないとマイナスなイメージを持たれがちだ。とはいえ、この東京都のプロジェクトのように、行政という回路を通すことで、スタートアップの参入を容易にすることもできる。
キングサーモンプロジェクトでは既に第2期の採択企業も発表され、次なる動きも進んでいる。
このプロジェクトをロールモデルにして、全国の自治体でスタートアップ支援の「熱」が伝播していくことを願う。