実験は、それぞれの役割に対し認識されているジェンダーの比率と、候補者の能力に対して予想される利益を吟味する余裕が認められるような方法で設計された。前者の観点では、応募者は現在の労働者の写真を見せられた。これは男性の場合もあれば女性の場合もあった。応募者はまた、その役割に就いていた過去の労働者の業績についても情報を与えられた。
結果からは、男性がより高い利益を予想した場合、男性からの応募が約15%増えていたことが示された。さらに、応募者の集団がより広範囲にわたったことから候補者の質も高まる場合が多く、結果として男性が確保する内定の数は増えた。
興味深いことに、こうした男性は仕事もよりうまくこなしていて、通常応募していたはずのより少ない人数の男性らと比べて退職しやすいということもなかった。
一方、これは女性には影響を与えていた。女性は大部分は提供された情報に無関心だったが、その仕事では男性の方が多いと考えた女性は仕事に応募する可能性が低く、仕事を得ても辞める確率が高かった。ただ、この現象はあまり有能ではない女性に主に限られたもので、性の平等が高まることで人材プールの質も高まる傾向にあった。
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職場での性の比率の不平等を是正しようとする試みは、広告で多様な人々を描くことに焦点が当てられていることが多く、これにはメリットもある。
ワシントン大学とメリーランド大学の研究者らが2015年に発表した調査では、特定のキャリアについて検索する際のグーグル画像は現実をあまり反映していない場合が多いことが示された。さらに、こうしたゆがめられた視点はそれぞれの分野での性の多様性に対して人々が持つ実際の意見に表れていた。
ボッコーニ大学のデルフィーノは、オレゴン看護センターが2002年の採用キャンペーンで男性に対し、「(あなたには)看護師になるのに十分な男性らしさがあるか」と問いかけていたことを指摘した。しかしデルフィーノは、こうしたキャンペーンが果たしてどれほどの変化を生むかについては懐疑的だ。
それでも全体的な労働力の質が上がることを考えると、いわゆる女性の職業で働く男性に結び付けられたスティグマ(不名誉)を減らすことと、その職業に就くことにより得られると男性が考える利益を宣伝することの2つがもたらすメリットは明らかだ。成長のため必要な人材を集めることに苦労しているセクターではなおさらだ。