しかし、学術誌の欧州社会学レビュー(European Sociological Review)に昨年11月に掲載されたオスロ大学の研究者らによる調査では、男性も職場での差別に苦しむ場合があることが明らかになった。女性が多い職業に応募する場合は特にそうだ。
この調査は、スペインやドイツ、オランダ、英国、米国、ノルウェーにおける労働環境を調べたものだ。それによると、女性は上級職に占める割合と収入面の両方で、こうした各国で確かにいまだに男性よりも全面的に差別に遭っていたものの、女性が多い職業に応募した男性が採用で先に進む可能性は女性よりも最大9%低いことが分かった。
研究者らは「男性が典型的な『女性の』仕事に応募した場合、面接に招待されたり、より詳細な情報提供を求められたりする確率が顕著に低かった」と述べ、「男性が支配的な産業社会関連の職業が消え続け、性別による区別がない職業の規模が拡大しているとすれば、そのうち性の固定観念の重要性が下がることになるだろう」と主張した。
応募者の多様化
先進国では、教育や医療など従来女性が多いセクターが顕著に成長している、応募者の多様化が重要な理由はここにある。こうした分野は、今後も急速に成長を続けることが予測されている。
しかしこうしたセクターの成長にもかかわらず、そこで働く男性の割合は1970年から変わっていない。製造業の雇用のシェアは大幅に下がり、さらには全体的な労働力への男性の参加率さえ下がっているにもかかわらずだ。
イタリア・ボッコーニ大学の研究者アレクシア・デルフィーノが記した論文によると、米国の製造業の雇用シェアは1968年の29.7%から2008年にはわずか12.7%まで下がっていた。さらに、労働力参加率は同じ時期に約80%からわずか約70%に減少した。
デルフィーノは、より女性中心のセクターで雇用が成長していることを踏まえ、なぜ男性らが仕事がある分野に動いていかないのかについての分析を試みた。彼女は英全土のソーシャルワーカー向け採用プログラムを通して大規模な現場実験を行い、応募者だけでなく採用された人や仕事でどれほど成功したかに目を向けた。