行政管理予算局(OMB)は、これらの措置によって米国の財政赤字を向こう10年で1兆ドル(約120兆円)超削減できるとの見通しを示している。
米国は超富裕層が世界でもっとも多く集まる国であり、フォーブスの世界長者番付によると資産額が10億ドル(約1200億円)を超える「ビリオネア」の半数以上が米国に居住する。このように富が集中するのは、米国では累進課税でなく税率区分による課税方式を採っているほか、所得税の限界税率や相続、キャピタルゲイン(有価証券譲渡益)にかかる税率も低く、税の抜け道もまだ多く残っているなど、富裕層が税制面で優遇されていることが一因だ。
実際、米国の超富裕層の実効税率はこれまで中間層よりも低かった。
米国における富の偏りの異常さは、俗に「1%」と呼ばれる超富裕層が保有する富の割合にも示されている。経済協力開発機構(OECD)の統計からは、米国での1%による富の保有が他国の場合と乖離してきたことが見て取れる。
1900年時点では、欧州でも1%の人がおよそ60〜70%の富を握っていたが、20世紀を通じてこの比率はいちじるしく下がっていき、ほぼ横ばいになる。これに対して、米国で1%が保有する富の割合は20世紀前半にはおおむね低下したものの、80年代初めに上昇に転じ、OECDのデータで最新の2014年には39%に達している。
比較のために挙げれば、同年の英国での比率は20%、フランスでは23%となっている。
ロナルド・レーガン政権の減税によって、米国の限界税率は1981年にそれまでの約70%から50%に下がり、1988年にはさらに28%まで下がった。レーガノミクスは確かにすべての税率区分での減税をめざしていたが、こうした大幅な限界税率引き下げが富裕層に平均的な国民よりも高い税金を支払わせようとするものでなかったのも確かである。