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2022.04.12 11:00

人の心を動かし、価値を創造し、世界のあり方を変える。電通デジタルのパーパスに込められた3つの要素とは

デジタルマーケティング業界の雄として、企業の事業成長をサポートしてきた「電通デジタル」。新たに打ち出したパーパス「人の心を動かし、価値を創造し、世界のあり方を変える。」が意味することとは? 電通デジタル 執行役員の田中信哉に聞いた。


数々の企業の事業成長を支援してきた電通デジタルは昨年、電通アイソバーと合併し、設立5年にして2,000人体制の大所帯となった。そして2022年4月、全社的な方向性を表すパーパスが発表された。変化の激しいマーケティング業界で電通デジタルがさらなる成長を続けるために、そこに込めた意味とは?策定に深く関わった電通デジタル執行役員 田中信哉(以下、田中)に聞いた。

混迷の時代で求められるのは課題設定力


「近年、比較的手軽に導入できるマーケティングツールも増え、クライアント側でもアプローチの選択肢が格段に増えました。しかしそれと同時に、何をどう進めればいいのか、頭を抱える企業が増えているのも現状です。適切な課題設定力がないと、試行錯誤ばかりが続いてしまいます」

コロナ禍によりデジタルトランスフォーメーションは加速したと言われるが、何もかもデジタルのみで解決できるものではないと、田中は指摘する。

「例えば“とにかくデジタル化だ”とアプリをつくったはいいが、利用されることなく立ち往生してしまう。これはデジタル化が目的になってしまっているからです。目的と手段が逆にならないよう、まずニーズを見極め、ときにはリアルな接点のほうが適している場合さえあると考えなければなりません」

本来デジタル化は、触れる側のリテラシーや目線、タイミングもすべて含めて考えるべきだと田中は指摘する。

「何よりも大切にしたいのは、顧客/生活者が求めている、心の充足を実現するサービスです」

そうした問題を抱える企業に対して電通デジタルは、課題設定で応える。クライアントが頭を悩ます優先順位の設定も、プロジェクト単位ではなく、常日頃から企業に伴走していれば提案可能なのだという。

「クライアント企業と徹底的に話し合い、目指す理想像を把握したうえで、課題を複数抽出し、整理し、核心を見つけ、優先順位とともにファシリテーションを行います。蓄積したデータから、いま人や資源を投資すべき領域を導き出すことで最大の成果を引き出し、ビジネスを加速させることができるのです」

そのうえで田中は、すべての中心に“人”がいるのだと原点に立ち返る。起点はクライアントであり、顧客/生活者であり、自分たち自身。そうした考えが、今回掲げられたパーパスには盛り込まれているという。



役員全員の熱意のシャワーを浴び、
導き出したパーパス


22年4月のタイミングで掲げられたパーパス「人の心を動かし、価値を創造し、世界のあり方を変える。」は、電通アイソバーとの合併もあり、あらためて全社で同じ方向を向くために策定されたという。ではそのパーパスは、どのように生まれたのだろうか。

「役員全員にパーパス案やその想いを書いてもらい、役員会でお互いの意見を見せ合い、徹底的に語り合いました。私は役員各自がもつ熱意の数々をシャワーのようにたっぷりと浴びて熱に浮かされたようにも感じました。

そうやって、意見を吸収し、因数分解し、すべてに共通している思いを弾き出して、伝わる言葉へと変換しています」

田中はその作業であらためて、自身の仕事の醍醐味を再認識したという。

「人がもつ情熱が、すべてを生み出していると感じた経験です。人と人が深く関わり合うことからソリューションは生まれるのだと。

普段から顧客/生活者目線を大切にしていますが、そこには人の心があります。感動、心地よさ、愛着、すべて人の心から生まれるものです。ビジネスもまた同様です。データとテクノロジーだけで磨けるのか。便利なシステムを提供するだけで、私たちのビジネスは終わるのだろうか……。もちろん、そんなわけはないのです。二足歩行ロボットの研究者が、突き詰めるうちに人間の歩行を研究していたという話があります。同じことがビジネスでも言えるでしょう。テクノロジーを駆使するには必ず、人について考え尽くすことが求められます」

そうした役員会の熱い議論から生まれたパーパスを、田中は3つの要素に分けて、解説する。

「“人の心を動かす”とは、人(顧客/生活者)と企業の間に立ち、どのように工夫すれば人の気持ちが動くかというこれまで電通デジタルが身につけてきたスキルを生かすことを指します。

“価値を創造する”とは、人を大切にし、心を動かすことで、これまでにない価値・変化を生み出すこと。

“世界のあり方を変える。”とは、小さな変革にも本気で向き合い新たな視点を提供していくということ。たとえ小さい変化であっても、誰かにとっては世界の見え方が変わるきっかけになることがあるということです」

大切にしているのは素直な感覚ですべてを考え直すということ。まず目の前にいる人の気持ちを動かさなければチームは動かず、チームが動かなければクライアントやその先にいる人の心も動かせないことを自覚し、取り組んでいく必要があるのだという。

Transformation Companyを目指して


パーパスとともに、電通デジタルがミッションとして掲げているのが「クライアントの事業成長パートナー」だ。ただし、このクライアントの範囲は従前よりも拡大するのだという。

「どこまで行っても、私たちだけの仕事はないのです。クライアントがあってはじめて、世の中に何かを生み出せます。そのうえで私たちは顧客企業だけでなく、協業するパートナー企業、自治体などの組織も含め、より広範囲にクライアントを定義し直しました」

さらにコミュニケーションのためのキーワードとして設定されたのが「Transformation Company」である。その文頭にDigitalの文字はない。

「これは私たちが何者かというアイデンティティーでもあり、DXに限定することなく、身近な変革のそばに電通デジタルが存在したいという意思表明でもあります。事業立ち上げ・デジタル化など、私たちのできることは数多くありますが、その中心に“人”がいることは変わりません」

トランスフォーメーションは世界を変えること。もし企業が望むなら、手を携えて完走を目指す覚悟が、電通デジタルにはあるのだと田中は熱を込める。

「クライアントが顧客/生活者と持続的につながるように、クライアントに私たちも長く寄り添いたい。そしてテクノロジーと創造性によって答えを導いていきたいと思います」

最後に田中は、真のトランスフォーメーションは、一時的な変化に終わるものではないと断言する。

「短期的ではなく、持続的な取り組みであること。その積み重ねによってはじめて、企業はビジネスを、未来に求められるカタチへとアップデートできるのだと考えます」

電通デジタル
https://www.dentsudigital.co.jp


起点はクライアントであり、顧客/生活者であり、自分たち自身。すべての中心に“人”がいるのです。


たなか・しんや◎1998年電通入社。クリエイティブディレクター、経営企画、電通アイソバー取締役を経て、電通デジタル 執行役員に就任。慶應義塾大学大学院 Executive MBA修了。


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