慈善活動だけでなく、多様な資金提供と活動を駆使して社会的インパクトの実現を目指す「フィランソロピー3.0」と呼ばれている動きだ。このフィランソロピストの動き。そして、社会課題解決を革新的な手法で行う非営利セクターの動きを交えながら、「新しい社会のつくりかた」の進化を見ていく。
同特集内の「私の好きな寄付先」をテーマにした記事を公開。ANRI代表パートナーの佐俣アンリと一般社団法人ソウレッジ代表の鶴田七瀬との対談で見えてきたこととは。
鶴田七瀬は2019年、「子どもたちが性被害者・性加害者にならない社会」を目指し、性教育教材の開発を行う一般社団法人ソウレッジを設立。性知識を学ぶためのイラストや漫画が描かれた「性教育トイレットペーパー」を作成・配布するプロジェクトで2回のクラウドファンディングに成功。現在は若者に緊急避妊薬を無償提供する「#わたしたちの緊急避妊薬」プロジェクトで3回目のクラウドファンディングに挑戦中だ。ベンチャーキャピタルANRI代表の佐俣アンリはなぜ、好きな寄付先に鶴田のソウレッジを選んだのか。
鶴田七瀬(以下、鶴田):(佐俣)アンリさんとは、次世代イノベーター育成スクール「MAKERSUNIVERSITY」で3年前に知り合いました。最初に支援していただいたのは、望まない妊娠をした未成年の女性が無料で中絶できるようにする「中絶基金」の設立を進めていたとき(本プロジェクトは後日中止)。アンリさんはポンと10万円を出してくださいました。
佐俣アンリ(以下、佐俣):つるたま(鶴田七瀬の愛称)がいいなと思ったのは、「直感的に賛成しづらいイシュー」に向き合っているところ。社会課題は、誰もがパッと「いいね」と思えるものばかりではありません。そういうプロジェクトに取り組む人は支援が必要です。
鶴田:アンリさんはすでに女性問題に取り組む重要性を理解されており、プロジェクトの意義をイチから説明する必要がなかった点がありがたかったです。アンリさんは、なぜ、個人での寄付活動を行っているのですか。
佐俣:社会課題に向き合う人を支援することにより「社会の負」の存在を知ることができるから。営利活動では解決できない社会課題の存在を認識できるのは、寄付をするいいところです。
ただ、寄付先とはあまりベタベタしないようにしている。自分の応援が支援を受ける人にとっての“呪い”になる可能性があるから。若い人はいろんなことを試しながら進んでいけばいいのに、自分のように世代が上の人から「いいぞ!」と勢いよく応援されたら、支援された人はいまの活動をやめられなくなってしまうかもしれません。