米疾病対策センター(CDC)のデータによると、米国ではオミクロン株の前に優勢となっていたデルタ株が中心だったころと比べ、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)で入院する0~4歳の子どもの数が、およそ5倍にのぼっている。
そうしたなか、ボストン小児病院の研究者らが新たに発表した論文から、Covid-19にかかった子どもたちには、「クループ症候群」と診断される例が多くなっていたことが明らかになった。
クループ症候群は乳幼児に多い疾患で、犬の鳴き声のような咳(犬吠様咳嗽)と高音の雑音が混じる呼吸(吸気性喘鳴)が特徴だ。原因は呼吸器系ウイルスへの感染で、咽頭や気管、そして肺につながる気管支の周囲に腫れが生じる。
一般的には、クループ症候群は軽症で済むことが多く、Covid-19のパンデミック発生前には、入院が必要となる小児の患者は5%未満とされていた。
だが、新たに発表された研究結果によれば、Covid-19にかかった後にクループ症候群を発症した乳幼児の場合は、12%に入院治療が必要となっていた。さらに、その半数近くには集中治療室(ICU)での治療が必要だった。これらの子どもたちは全員が5歳未満で、SARS-CoV2のワクチン接種は受けていなかった。
「オミクロン株」でリスクが上昇
研究チームがこの調査の対象期間としたのは、2020年3月~2022年1月だが、クループ症候群の患者のうち8割が、オミクロン株が主流になって以降に確認されていた。
そのため研究者らは、オミクロン株は過去に優勢となったその他の変異株と比べ、感染した小児にこの病気を引き起こす危険性が高いと考えている。過去の研究から、オミクロン株はその他の株と異なり、主に肺ではなく上気道で増殖するとみられており、クループ症候群の患者が増加した原因はそこにあるとの見方だ。
SARS-CoV2に感染し、その後クループ症候群を発症した子どもたちは、ほぼ全員がステロイド系抗炎症薬「デキサメタゾン」による治療を受けていた(この薬は、Covid-19のみで重症化した場合にも使用される)。
また、クループ症候群の治療にはパンデミック発生前から、デキサメタゾンが一般的に使用されていた。Covid-19にかかり、その後クループ症候群を張症した子どもにはさらにエピネフリンも投与され、治療後は全員が回復し、退院している。
論文の筆頭著者であるボストン小児病院のライアン・ブリュースター医師は、クループ症候群を発症したCovid-19の乳幼児は入院率が比較的高く、必要な薬の量も多かったことから、「その他のウイルスと比べ、SARS-CoV2はクループ症候群の重症化を招きやすいと考えられる」と指摘している。
同医師はまた、SARS-CoV2に感染したことによってクループ症候群を発症した患者への最善の治療法を特定するためには、さらなる研究が必要であるとも述べている。
この研究結果を受け、論文の著者らは乳幼児の保護者に対し、クループ症候群を誘因するウイルスは他にも数多くあるものの、子どもが発症した場合にはまず、SARS-CoV2への感染の有無を確認するための検査を受けるよう呼びかけている。