これはNFTが「期待を買う」ものだからに他ならない。「期待を買う」の真意は、NFTマーケットを盛り上げたい、という、制作者、運営者、購入者の一体となった参加意識だと読み解ける。
もちろん、何を「期待」するのかと言えばそれぞれの立場で自分の見る目の証明としての「値上がり」が「期待」されるわけだが、このために、まだ小さいNFTマーケットが世界で盛り上がることが大事なのである。新たな参入者が増えれば、結果として全体の値上がりが「期待」されるから、まずは、NFTのコミュニティをもっと盛り上げましょう、というわけだ。
したがって、NFT、コレクションは発売する前のみならず、発売された後にも「期待」を持たせ、コミュニティを大きくしていく運営が肝心となる。つまり「このコレクションは今後も何かをしてくれそうだ」と感じさせ続けるのである。
クリエイターも運営者も、コミュニティを構築することには積極的だ。転売のたびに彼らには利益がもたらされる。だからこそ、コレクション所有者のコミュニティを盛り上げ転売が起きやすくすることは大切なことなのだ。
さて、Love Addicted Girls は、発表されたばかりで、まだこれからの段階ではあるが、すでにいくつかの仕掛けを行っている。Discord上でのコミュニティの運営方法を見ていると、さながらソーシャルゲームの運営方法を見ているようでもある。
例えば一定のコレクション所有者は称号を得ることができ、コミュニティ運営への発言権が獲得できる。これはまるでソーシャルゲームの課金者に何らかのランクや称号が与えられる仕組みのようだ。なお、今後は、発表されたコレクションのキャラクターを使った漫画やアニメなどのマルチメディア展開や、ECサイトでの物販も視野に入れているとのことだ。
こうしてみていくと、NFTとは何を買うものなのか?との問いへの答えは、一つは「期待」であり、そしてもう一つは、「コミュニティ参加の権利」だと言えるだろう。ソーシャルゲームのような仕掛けと相まって、クリエイターと一緒のコミュニティに所属することの喜び、メンバーシップの喜びだと考えられる。例えば、NFTの所有者はクリエイターでなくても、今後生まれるアニメのストーリーなどに意見を言うこともできるかもしれないのだ。
もう一つNFTの概念の新しさとして、二次創作の流通に触れておきたい。二次創作はむしろ歓迎される。なぜなら、二次創作作品が生まれ、さらにはそれがメンションされると、オリジナルの価値が上がり、オリジナル作品の転売が起き、結果としてクリエイターへの金銭的な保証が自動的になされるからである。
真似されるほど価値がある、どんどん真似してもらおうじゃないか、というわけだ。実際に有名なクリエイターの二次創作に賞金を出す世界的なイベントなどもある。
これは、今までの著作権が、むやみに使わせないことで権利を守っていたのとは真逆の概念であろう。二次創作でもオリジナルのクリエイターに利益がある仕掛けになっているからこそ可能なことだ。