米国最大級の貨物鉄道企業の「ユニオン・パシフィック」は最近、1億ドル以上を投じて「ワブテック」社とキャタピラー社傘下の「プログレス・レール」からバッテリー駆動の機関車20台と充電システムを購入すると発表した。
オマハを拠点とする同社は、2023年以降にカリフォルニア州とネブラスカ州の貨物ヤードにこれらの列車を導入することで、年間8000トンの炭素排出を削減できると試算している。米国鉄道協会によると、列車でのコンテナ輸送のエネルギー効率は、貨物トラックの4倍も優れているという。
売上高で米国第2位の鉄道会社であるユニオン・パシフィックは、2030年までに温室効果ガスの排出を26%削減する方針で、電動化がその助けになると考えている。同社のサステナビリティ担当バイスプレジデントのベス・ホワイテッドは、「貨物トラック業界が電動化に進む中、私たちにとって重要なのは、できるだけ早く排出量を削減することだ」と述べている。
バッテリー駆動の自動車や商用車の生産を拡大するために、大手自動車メーカー各社は、数十億ドルを投じているが、貨物鉄道の電動化にはさまざまな難題が待ち構えている。彼らは、鉄道特有の要件に合わせたバッテリーシステムの構築を行う必要がある。
それでも、炭素ガスの削減に関して、鉄道業界は驚くほど効率的な位置から出発している。米環境保護庁(EPA)によると、2019年には米国内の貨物の約40%が鉄道によって運ばれていたが、鉄道輸送が輸送関連の温室効果ガス排出量に占める割合は2%未満だった。それに対し、トラックによる輸送は24%を占めていた。
ユニオンパシフィックは、ワブテックに2.5メガワット時のバッテリーを搭載した電動機関車を発注したが、そこで使用されるリチウムイオン電池が、150両以上もの車両をディーゼル機関車が引っ張っている路線に配備できるほどの耐久性があるかどうかはまだ分からないという。
そのため、当面の間、同社はバイオディーゼルや再生可能な資源から作られた燃料の使用量を増やそうとしている。また、カミンズ社などは旅客列車用に水素駆動システムを開発中だが、水素の貯蔵施設の準備などが課題となり、当面は選択肢から外れることになるという。