ビジネス

2022.03.14

アマゾンは「自分より優秀な人」を恐れず採用。社員全員がリーダーだから強い

aLLHANz合同会社共同代表太田理加氏(左)、小西みさを氏


「失敗と成功は双子だ」


小西:事業を生み出すだけの「新規事業部」は、そもそもアマゾンにありません。その代わりに、社員全員が新規のビジネスを考案したい場合には、社員誰でも1ページのプレスリリース(+FAQ)で書き、提案するというプロセスがありました。お客様に対して何ができるか、ひとりの企画者として考えるんです。全員がイノベーティブなアイデアを出す責任を持ち、それに対してフィードバックが得られるフェアな環境となっていました。そうすることで全員が戦力となる。アマゾンらしい効率的な部分です。

太田:あと、大型案件やプロジェクトなど、複数ページのものがあっても、担当者の名前が記載されることなく、常にチームで活動していました。誰かひとりが優秀な動きをするのではなく、チームを評価していくという方針がアマゾンにありますよね。

また、失敗に対しての理解も深かったと思います。人間誰しも失敗はありますし、どんなに頑張っても失敗することがあります。アマゾンでは、その失敗を責めることはありません。大切なのは、なぜ、失敗したのかの追求。失敗を防ぐための要因を特定することを優先します。その中で、ルートコーズ※を書き出すことがあります。

※「ルートコーズ」とは、根本原因分析、あるいは根本問題分析で、障害や問題の症状に着目するのではなく、根本的な原因を特定することに焦点を定めた原因解決プロセス。物事の本質的かつ根本的な原因を明確し除去することにより問題の解決と再発を防ぐためのプロセスである。基本ステップとして、「問題経緯の把握」「根本原因の明確化と対策」「再発防止策の定義」がある。



小西:失敗があったとしても、このルートコーズが良く書けていたら褒められることもあったりね(笑)。

太田:ルートコーズを他のメンバーに共有することで、同じような失敗を防ぐことができますし、挑戦を認める文化が醸成できます。ですので、アマゾンでは失敗を許す文化があったといえるでしょう。

小西:努力をしないで失敗していては、どんな企業でも評価されません。ですが、考え抜いて、挑戦して、失敗という結果を得た。これはもはや「学び」なんですよね。

「失敗と成功は双子だ」と、ベゾスもよく言っていました。この言葉を聞いて、メンバー全員がモチベーションを上げていたことを覚えています。自分の中にあるリーダーシップを発揮し、それがお客様の満足度向上につながるのなら、もっと積極的に挑戦しようと思えるんです。こういった失敗への理解が会社側にあることで、心理的安全性が担保されます。イノベーションを起こすきっかけにもなりますが、人材を育成していく際に、非常に大事なポイント。“社員全員がリーダーであることを自覚できる”、そんな仕組みがアマゾンにはあったかと思います。



太田 理加(おおた・りか)◎アマゾン ジャパンに入社後約13年間、新規ビジネス立案・立ち上げを担当し、立ち上げたビジネスの事業責任者を歴任。とくに Fashionは、立ち上げ時のゼロから1000億円までのビジネスに成長させる。2015年に立ち上げた日本初の定額制ジュエリーレンタルサービス「スパークルボックス」は、まったく新しい形のeコマースとして話題になる。2020年3月にaLLHANz合同会社共同代表に就任。リーダーシップにフォーカスした幹部育成に力を入れる。他の著書に『アマゾンで私が学んだ 新しいビジネスの作り方』(宝島社刊)がある。

小西 みさを(こにし・みさを)◎アマゾン ジャパンの黎明期から急成長した13年間、アマゾンのブランド価値向上に貢献。経営メンバー兼広報本部長として、アマゾン ジャパンのリーダー育成に深く関わる。2017年1月にPR・ブランディングコンサルティング会社AStory合同会社設立、代表就任。 2020年3月にaLLHANz合同会社共同代表に就任。他の著書に『アマゾンで学んだ! 伝え方はストーリーが9割』(宝島社刊)がある。


『amazonのすごいマネジメント』(宝島社刊)

文=上沼祐樹 編集=石井節子 撮影=曽川拓哉

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