ビジネス

2022.03.14

アマゾンは「自分より優秀な人」を恐れず採用。社員全員がリーダーだから強い

aLLHANz合同会社共同代表太田理加氏(左)、小西みさを氏


アマゾンで上司は「コーチ」


小西:
ベゾスをはじめ、「より長く働いて欲しい」という思いがアマゾンにはありましたね。そのため、育成のシステムには非常に力を入れていた印象です。週に1回30分、上司とチームメンバーが話し合う「1on1ミーティング」もその一つ。

太田:そもそも上司側の評価ポイントが、「所属チームの人材をどれだけ育てられるか」でした。目標とする数字の管理ではなく、部下と並走しながら進捗を把握し、課題が見つかれば共に解決する。そのためのコミュニケーションが「1on1」で実施されていました。

小西:例えば、プライベートで悩みを抱えてしまうと、多少なりとも仕事に影響がでてしまう。アマゾンではここへの理解が深かったと思います。社員が悩みを抱え続け、仕事がはかどらない理由を後から告げられても、「もっと早く言ってくれれば……」となってしまいますが、密にコミュニケーションをとることで、自分達でサポートできる部分を探ることができます。ですので、上司は“コーチ”として、“選手”である社員に付き添い、話を引き出して、話を聞いて、その上で、解決策を引き出していくというポジションになりますね。



太田:「バディ(同じ仕事の違う部署の人)」「メンター(違う部署の先輩)」「スポンサー(幹部候補の引き上げ役)」など、上司とは異なるポジションの方もいるので、さまざまな関係性で助け合うことになります。

小西:「育児」など業務と離れた悩みだと、その相談相手がずっと同じ人である必要はありません。悩みによって頼れる人がいる状態を作ろうとしていましたよね。心理的安全性の確保は、人が仕事で育っていくなかで重要なもの。こういった仕組みは非常にありがたかったと思います。

社内イベントでもプレスリリースを発信?


小西:いまのPR活動サポート事業で、「社内イベントのプレスリリースを書いてみたら」と、ある企業に提案したことがあるんです。チームの任意参加の社内イベントを土曜日に開催した場合、どうしても参加意欲が上がらない。でも、それがどれだけ社員を想っての企画なのか、実際に参加するとどんな体験ができるのか、そういったものをプレスリリースとして発信するのです。社内プレスリリースはアマゾンでもありました。プレスリリースを書くことで、何が課題で深掘りをすべきか、盲点だったものが見えやすくなるんですよね。

太田:アマゾンでプレス・リリースを書くトレーニングもありましたよね。今に生かされています。プレスリリースを書くことでアイデアのブラッシュアップや、それを元にPL(損益計算書)を作ることもあります。

小西:プレスリリースはサービスが出来上がった後に出すもの、そう思われる方も多いかと思います。ですが、未来の顧客のニーズ、ソリューション、体験イメージを言語化することで、公平にかつ効率的にサービスの方向性を見定めることができるんです。



太田:「テクノロジー会社のアマゾンでは、今ある技術や新しい技術からサービスを創っているんですよね?」と聞かれますが、そんなことありません。数年後のユーザー体験を想像しながら、プレスリリースを書き、それをディスカッションしてサービス化している感じです。

小西:そのとおりです。だからプレスリリースは、多様なお客様のニーズに応えるために誰でも書いていいし、むしろ誰もが書くべきという文化でした。
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文=上沼祐樹 編集=石井節子 撮影=曽川拓哉

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