「ジョブ型雇用」、日本人が生き抜くヒントとは?

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2022年に入り、日立製作所が「ジョブ型」人事制度の導入を発表しました。

ジョブ型雇用とは、あらかじめ職務内容を明確に定めたうえで雇用するシステムを指します。日本の多くの企業では、長らく終身雇用制度と共に職務内容を限定しない「メンバーシップ型雇用」が採用されてきましたが、人材獲得競争がグローバルに行われる今、ますますジョブ型雇用へのシフトが進み、今後もその流れは不可逆的と言えるでしょう。

私たちは今、「ジョブ型雇用」に向けてどのように考え、何をすべきなのでしょうか。

今回は、アマゾンでのキャリア形成の考え方や、米アマゾン本社で働くうえで私が個人的に意識していることなどをご紹介します。

キャリアを自律的に形成する


ジョブ型雇用というと、キャリアの深掘りや専門性の追求というイメージをもつ方が多いのではないでしょうか。

しかし、意外にも米アマゾン本社では、社内異動が積極的に推奨されています。

では、日本のメンバーシップ雇用におけるジョブローテーションと何が違うかというと、社員が職務を主体的に選ぶ点にあります。専門性を磨き続けることもできますし、ゼネラルマネジメントを志向して他職種を経験することもできるのです。

そのため、辞令に従ってその職務を全うするのではなく、キャリアをより自律的に形成していく姿勢が必要です。

ときには、より良いポジションや雇用機会を求めて社外へ転職するという選択もあるでしょう。アメリカ合衆国労働省労働統計局の統計によると、アメリカの生涯転職回数は、平均して12回ともいわれています。

アメリカでは、顧客需要や労働環境に応じてポストやポジションは常に変化するので、退職した人が再び元の会社に戻ってくることも少なくありません。

経験を積むにつれて能力やスキルはアップデートされます。一度不採用になったとしても、経験を積んで成長したうえで、またチャレンジすれば良いのです。

リーダーシップを発揮する


職務が明確なジョブ型雇用では、業務所掌の縦割りが助長され、チームの連携が阻害されるというデメリットをよく耳にします。「私の仕事ではありません」という仕事の押し付け合いが起こる懸念があると言われています。

アマゾンでは “Leadership Principles” の浸透と運用を徹底しています。“Leadership Principles”とは、16項目からなる社員の行動指針です。例えば、Ownershipという項目では、自分のチームだけでなく、会社全体のために行動することが求められています。

人事評価はこの“Leadership Principles” に沿って行われるため、他部署とのチームワークが蔑ろにされることはありません。心がけるべき行動指針が明確で、それが人事評価にしっかりと反映されることがポイントです。

また、“Subject Matter Experts” という部門横断的なプロジェクトもあり、自身の職務と異なる課題を担当する取り組みもあります。例えば、営業担当者が「運送費用の最適化」や「品揃え拡充の戦略立案・実施」などのプロジェクトをリードするというような感じです。

マネージャーがアサインすることもあれば、本人がプロジェクトを立ち上げることもあり、社員が大局的な視点や判断力を養うことに有用です。

人材の流動が高いアメリカでは、優秀な人材を繋ぎ止めるために新たなポジションを創ることもよく行われます。職務を全うすることはもちろん、リーダーシップを発揮して求められる人材になりましょう。
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文=伊藤みさき 構成=竹崎孝二

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