ロイター通信の複数の情報筋は、同社創業者である許仰天(クリス・シュー)最高経営責任者(CEO)が、海外での新規株式公開(IPO)について中国で提案中の規則の厳格化を回避するため市民権の変更を考えていることを示唆した。
同社がニューヨーク証券取引所への上場からどれほどの資金を集めようとしているのかは不明だ。しかし筆者は夏に、同社が近い将来上場のための目論見書を提出する見込みで、約500億ドル(約5兆8000億円)規模のIPOを準備していると報告した。
シーインの広報担当者は当時、中国の投資界で口づてに伝わっていたこのうわさを全面的に否定した。しかし今回のIPOが実現すれば、昨年7月に規制当局がこうした上場の監視強化に踏み切って以来、中国企業による米国での初の大きな株式取引となる。
シーインが米国でのIPOを見据えて初めて準備を始めたのは約2年前だが、米中の貿易分野における緊張の高まりにより市場の変動が激しくなったことを受け、計画は棚上げにされたと考えられている。
シーインの広報担当者は今回のニュースに関し、上場の計画はないとロイター通信に告げた。
海外IPOを取り締まる中国
中国のサイバー空間の管理と海外での上場申請については今後、中国の証券規制当局が最終決定を下すことになっているが、実施が決まれば中国企業の米国における上場のプロセスはより複雑化・長期化するだろう。
海外での上場に関して証券規制当局が現在提案している規則では、最高幹部の過半数が中国市民か中国に居住している会社、あるいは主な事業活動が中国で行なわれている企業を対象としたものだ。
シーインの創業者である許がシンガポールの市民権を取得すれば、海外でのIPOを行うまでのプロセスがより楽になる可能性がある。
シーインはファストファッションの逸材的存在で、世界中の多くの倉庫から150以上の国や地域に出荷している。新型コロナウイルス感染症の流行中にオンラインへの移行が進んだことを受け、同社は2021年に約157億ドル(約1兆8000億円)を売り上げたと考えられている。2020年の売り上げは約100億ドル(約1兆2000億円)だった。