約1000人の低所得の母親と乳児の集団を対象としたこの調査は、米科学アカデミー紀要(PNAS)に先日掲載され、子ども時代の貧困を脳の構造や機能の違いと結びつける先行研究を裏付けるものだ。
研究者らは、月333ドルを1年間受け取った家庭の健康な1歳児の間では、言語や認知・社会情緒的機能の改善と結び付けられた高周波の脳活動がより強まることを突き止めた。
同研究は人種・民族的に多様な背景を持つ母親を対象とし、その大半は黒人かヒスパニック系で、ニューヨーク市やニューオーリンズ大都市圏、ミネアポリス・セントポール都市圏、オマハ大都市圏から集められた。
参加者らの年間世帯所得の平均は2万ドル(約230万円)をわずかに超える水準で、月333ドルの給付金により収入はおよそ20%増えた計算だ。
研究者らの調べによると、月に20ドル(約2300円)のみしか受け取らなかった対照群の家庭の乳児は、333ドル受け取った集団と同様の効果を示さなかった。
研究者らは、コロンビア大学、デューク大学、ニューヨーク大学、カリフォルニア大学アーバイン校、メリーランド大学、ウィスコンシン大学マディソン校に所属していた。
子ども時代の貧困と脳機能の低下の相関関係はかなり前から確立されてきたが、この2つの要素の間に因果関係を導くことはより難しかった。
米国では子どもの貧困が増えており、米国勢調査局によると2019年には14.4%だったのが2020年には16.1%に増えている。拡充された児童税額控除(CTC)の制度では、子ども1人につき3600ドル(約42万円)が支給され、一部では米国における子どもの貧困を半減させたと推定されているが、これは12月に期限切れとなった。
児童税額控除プログラムは、ジョー・マンチン上院議員(民主党、ウェストバージニア州選出)がバイデン大統領の約2兆ドル(約230兆円)規模の「ビルド・バック・ベター(よりよき再建)」法案に反対した中核的な要因だ。
米ABCテレビとハフポストが引用した匿名の情報筋によると、マンチンは親らが児童税額控除の給付金を薬物に無駄にするかもしれないと考えていた。しかし米国勢調査局の家庭動向調査に回答した家族は、児童税額控除による支払いを主に食品と育児に費やしたと述べている。