米国の州ではここ数年、大麻の使用を合法化する動きが広がり、現在は18州と首都ワシントン、米領グアムで娯楽用の購入が可能になっている。医療目的の使用は大半の州で認められており、少なくとも処罰の対象からは外されている。大麻を全面的に非合法としているのは11州にとどまる。
新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)が起きると、大麻の販売は急増し、医療用のみ合法化している州でさえ伸びた。たとえば、中西部のミズーリ州では医療目的の購入解禁から1年2カ月ほどの間に、販売所は180カ所、売上高は2億ドル(約220億円)超に達した。
州をまたいで事業を展開している大麻関連企業は、医療用のみ合法化されている州にも進出している。大麻関連の不動産投資信託(REIT)を手がけるニューレイク・キャピタル・パートナーズは最近、ミズーリ州で約6500平方メートルの不動産を購入した。同社が米国で不動産を取得したのは11州目だという。
とはいえ、大麻事業者にとっての大きな問題は残ったままとなっている。ひとつは資本へのアクセスだ。西部オレゴン州ポートランドの大麻栽培業者、チャリス・ブランズのメーガン・ミラー最高執行責任者(COO)は「大麻は連邦レベルではいまだに合法化されていないため、資本の流入が非常に制限されている」と話す。
大麻が連邦法では違法なものであるために、大麻関連企業は融資を受けたり、銀行口座を開設したり、クレジットカードをつくったりするのが難しくなっている。また、大麻関連企業による所得税の申告では、一般的には事業経費とされるものが控除できず、利益も出しづらくなっている。
さらに、米国では大麻の営業が難しいことも長年の障害になっていると、大麻濃縮カートリッジを製造するネバダ州ラスベガスの企業、キャンプのアーロン・ニーノCOOは説明する。
ニーノによると、グーグルやフェイスブックは自社のプラットフォーム上での大麻製品の営業に厳しい姿勢をとっており、米国では大麻関連のメールやショートメールを送ることは認められていない。広告する場所がないと、企業が消費者の間で製品の認知度を高めることは困難になる。
一方、ラスベガスの大麻販売店「ザ・ソースプラス」でブランド責任者を務めるティナ・ウルマンは、大麻をめぐる政治状況も変わってきているとみている。
ウルマンによれば、共和党では成人による大麻使用などへの支持がかつてないほど強くなっており、民主党では大麻業界での多様性を高める取り組みが引き続き支持されることが見込まれるという。実際、ニューヨーク州の知事は、大麻業界での公平性を促進する基金に2億ドルを拠出することを明らかにしている。