経済・社会

2022.01.18 18:00

統計数理研究所から見えた日本人の国民性とは?


特徴その2は、自己責任の考え方が希薄な姿勢である。多くの日本人の軍事外交への臆病な態度が典型だが、この国民性はコロナ禍でより明瞭な姿を現したと思う。マスク着用も3密回避も緊急事態宣言もワクチンも医療体制も、すべてが政府や自治体のせいにされた。

誰もが予期できなかったコロナである。公的部門は懸命だった。一年以上前から官邸はワクチン確保に奔走していた。

政府の広報下手は酷かったし、もたつく印象も否めなかったから、それをよいことに人心をかく乱したのがテレビのワイドショーだ。悪いのは「官」、国民は犠牲者だ、としつこく繰り返した。一億総無責任宣言だった。

正面から「カラオケ歌おうが、外で深酒しようが、ライブで密をつくろうが勝手にどうぞ。でも絶対条件が2つある。決して他人様にうつさないこと、自分がコロナにかかっても見てくれる病院はないと覚悟すること。自己責任ですよ」と断じるような論客は見ない。

統計数理研究所の『日本人の国民性調査』の統計結果が興味深い。自分と国家の関係について6割の国民は「考えたことはない」、社会的問題について5割の国民が「意見はもたないほう」、しかし社会に対する不満には、「なにもしない」国民が3割以上を占めている。

では、こんな国民が、生まれ変わるときに好きな国を選べるとしたらどこか? 8割が「日本」と答えている。自己責任なくとも、人に頼って生きていけると信じ込んでいるのだろう。

二言目には、激動の時代やら混迷の世界情勢やら不安定な外交軍事と発するが、根本がこののんきさでは将来が危ない。

時あたかも新政権が発足し、衆議院議員の総選挙も間近である。『日本人の国民性調査』によると日本人の過半が選挙を重視している。

すぐには無理かもしれないが、少しずつでも正鵠(せいこく)を射た西洋観と自己責任原則への転換を示していきたい。パラダイム・シフトは待ったなしである。


川村雄介◎一般社団法人 グローカル政策研究所 代表理事。1953年、神奈川県生まれ。長崎大学経済学部教授、大和総研副理事長を経て、現職。東京大学工学部アドバイザリー・ボード、嵯峨美術大学客員教授などを兼務。

文=川村雄介

この記事は 「Forbes JAPAN No.088 2021年12月号(2021/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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