今年10月に米格付け会社ムーディーズが発表したレポートでも、米国の外食産業が必要なだけの人員を確保するためには、賃金の引上げが不可欠と指摘されている。
そうした状況を受け、メキシカン・ファストフードの米タコベルは先ごろ、人材の採用と定着に関する新たな戦略を打ち出した。直営店の従業員の最低賃金を、2024年半ばまでに時給15ドル(約1700円)に引き上げるほか、年収最高10万ドルのゼネラルマネージャーの育成を目的としたリーダーシップ・プログラムを導入する。
さらにタコベルは、エドテック(教育テクノロジー)の米ギルド・エデュケーション(Guild Education)と提携。従業員が学費無料で学位を取得できるよう支援するという。
このイニシアチブの対象は、店舗の93%を占めるフランチャイズ店ではなく、直営店の従業員だ。とはいえ、こうした動きが直営店以外に影響を与えないというわけではないだろう。
タコベルの直営店とフランチャイジーの取り組みには相乗効果があるとされており、メニューやビジネスモデルのアイデアについても、タコベルはフランチャイジーの意見をよく聞くことで知られている。直営店でこれらのイニシアチブが効果をあげれば、フランチャイジーも同様の取り組みを検討すると考えられる。
さらに、タコベルを運営するヤム・ブランズが傘下に持つその他のファストフード・チェーン、KFCやピザハット、ザ・ハビット・バーガー・グリルにとっても、これらの取り組みは参考になるだろう。
より労働者中心の業界へ?
米国では今年、6月にチポトレ・メキシカン・グリル、10月にスターバックスが最低賃金の15ドルへの引き上げを発表した。フランチャイズ展開していないこれら2つのチェーンはタコベルなどと比べ、こうした決断を下しやすいといえる。
スターバックスなどはその決定により、外食産業における「ニューノーマル(新たな常態)」の指標となり、従業員たちが職場に期待するものも変化させている。