米労働省労働統計局は2021年10月、驚くような数値を発表した。2021年の8月だけで、430万人の労働者が、より良い仕事を求めて、あるいは、在宅勤務からオフィス勤務に戻りたくないという理由で、仕事を辞めたというのだ。メディアはこの事態を「大離職時代(The Great Resignation)」と呼んでいる。
一方、起業家でビジネスコンサルタントのブライアン・フィエルコフ(Brian Fielkow)は、「『大離職時代』と言って、騒ぐのはやめよう」と話す。「それよりも話題にすべきは、大認識時代だ。仕事に高い意欲をもって取り組む従業員は退職する可能性が低い、と認識すること。従業員を適切に扱わなければ離職率が上る、と認識すること。従業員を定着させるのは人材管理の仕事ではない、と認識すること。従業員の定着には戦略的な意味があり、人材管理の仕事というよりは、企業幹部が推進していかなくてはならない仕事なのだ」
フィエルコフは、ビジネスリーダーとして30年に及ぶ優れた実績を持ち、数百万ドル規模の組織を成長・変革させてきた。また、テキサス州ヒューストンを拠点に講演活動を行う一流の講演者であり、独自の著作も2冊ある。
フィエルコフによれば、従業員たちのエンゲージメントに関しては、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック体験から学ぶべき教訓がいくつかある。
教訓その1:従業員に共感する。「パンデミックが始まってすぐに気がついたのは、新型コロナウイルスをめぐるリスク許容度は、従業員一人ひとりで大きく差があることだった」とフィエルコフは述べる。
「そこで私たちは、従業員が自らの許容範囲を、可能な限り自ら決定できるようにした。各自の仕事についての決定権を与えたことで、私たちが従業員を理解し、信頼していることを示したのだ。その結果、従業員たちはかつてないほどの努力と献身で応え、結果を出してくれた」
教訓その2:頻繁にコミュニケーションをとる。「パンデミックは、尋常ならざる不透明感をもたらし、それが恐怖を生んだ」とフィエルコフは言う。
「その恐怖に対処すべく、私たちは頻繁にコミュニケーションをとり、情報を共有し、成長に向けた道筋を示した。透明かつ謙虚な姿勢で困難に立ち向かったことで、信頼感が培われた。私たちはチームとして、事態を把握し、可能な限りの手を尽くして状況を切り抜けていることを理解していた。全員がともに立ち向かっていることを、従業員たちはわかっていた。そうした率直さのおかげで、信頼関係がさらに強化された」