筆者の企業リーダーシップIQが実施した従業員の燃え尽きに関するアンケート調査でも同様の結果が出ており、リーダー職に就く人の71%が、能力の高い従業員が燃え尽きを理由に退職すると予想していると回答した。
理由はどうであれ、従業員が次々と辞めていく状況は深刻な問題だ。だが、今の経済状況では、どんな企業であっても敗者となる運命は避けられないのだろうか?
職場に関する深刻な懸念が広まる一方で、今の状況を競争力向上のチャンスだと捉えて、有能な従業員の離職を防止したり、新規雇用につなげたりする企業もある。ライバル企業が後退する中で全身できる企業は、2倍の躍進を遂げられることになるのだ。
例えば、リーダーシップIQが実施した先述の調査では、新型コロナウイルスの流行発生以前と比較して従業員のレジリエンス(回復力)が向上したか減退したかを企業に尋ねたところ、43%が減退したとする一方で、34%が向上したと回答した。あなたの企業の従業員がコロナ禍によりレジリエンスを獲得できたのなら、ライバルより優位に立てたと言ってよいだろう。
あなたの企業は、働き方の柔軟性向上とワークライフバランス実現のために遠隔勤務とオフィス勤務とのハイブリッド型勤務を導入したかもしれない。ただそれは容易ではなく、うまく実行できている企業は多くない。リーダーシップIQが実施した別の調査では、ハイブリッド型勤務をするチームを管理する高度かつ専門的なスキルを持ち合わせたリーダーはわずか28%との結果となった。あなたの企業に、ハイブリッド型勤務チームの管理に慣れたリーダーがいるのなら、それもまた競争上の優位性となる。
記録的な離職トレンドをめぐる懸念の中で見落とされがちなのは、ライバル企業よりも魅力的な職場を作るのに、とてつもない方針変更は必要ないということだ。従業員の燃え尽きを減らしたり、ワークライフバランスを改善したり、遠隔勤務やハイブリッド型勤務を選択可能にするフレキシブルな働き方を提供したりといった、わずかな努力をするだけで、人材採用でライバル企業に大きく差を付けられる。繰り返しになるが、ライバル企業が後退する中で進歩できる企業は、2倍の躍進を遂げられる。
グリーンハウス共同創業者のダニエル・チャイト最高経営責任者(CEO)は筆者に対し、次のように語った。「近所の企業からの退職者が、自社の採用候補者になる。職場に魅力があり、人材の見極めに長けており、かつ従業員が快適に働ける環境を提供できる企業にとって、市場はより流動的で有利なものになる。そのような立場にいられれば、非常に強い力を得られる。しかし、ただ惰性に任せて従業員を維持しようとするような組織は危険だ」