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「サステイナブルな養殖アワビを新たな“ ハワイ産” に」
ビッグアイランド・アバロニ CEO
HIROSHI ARAI / 新井 宏


ハワイ古来の自然、文化、食を見直そうとする動きがある一方で、新たな“メイド・イン・ハワイ”を創造しようとするパイオニアもいる。ハワイ島コナでエゾアワビの養殖業を手がける、新井宏がその人だ。

遠洋漁業が衰退し日本の水産業が輸入メインへと移り変わった50年前、大手水産会社の駐在員としてシアトルに赴いた新井は、以来、漁業ビジネスの移り変わりを間近に見ながら、捕獲するのではなく自ら育てるサステイナブルな水産に将来性を感じるようになったという。そして新たな事業に着手したのが16年前、60歳のときだ。

「1980年代に海洋深層水を汲み上げるプロジェクトがハワイ島で進められ、それに着目したアメリカのアワビの養殖研究家が98年に会社をつくったのですが、そのとき一緒にやらないかと誘われたんです。全米一の日射量を誇り、冷たくきれいな海洋深層水があるハワイには、確かに大きな可能性を感じました。アワビの養殖はどこの国でも盛んですが、地場の生態系を守るため異種のものはもち込めないことになっています。でもハワイにアワビはいなかった。それで青森の稚貝をもってきてエゾアワビを養殖することになったのです。三陸とまったく同じ、あるいはそれ以上の自然環境があり、大陸と日本の中間にあるハワイはマーケット的にも有利。これほどいい条件はないと、大きな夢をもって始めたのです」

しかし養殖は時間と資金が膨大にかかるうえ、技術的な難しさもあるため、通常9割は失敗するとされている事業。特に資金繰りは苦労の連続だったという。しかし8年前、アメリカ最大手の水産会社からの資本提供が実現し、ようやくハワイ唯一のアワビ生産会社として軌道に乗り始めた。さまざまな試行錯誤を経て2010年に完成したハワイ島の養殖施設は、約4万㎡の広さを誇り世界でも最大級。海底900mの深海から汲み上げられる6度の海水に温かい表層水を混ぜ合わせ、アワビの成育に理想的な温度に調整。ミネラルを豊富に含みバクテリアもほとんどいない海洋深層水でアワビの餌となる海藻も育てる。この完璧な環境で生産される「コナ・アバロニ」は、天然ものと比べてもまったく遜色のないクオリティで、パシフィック・リムの巨匠アラン・ウォンをはじめ、世界各都市の高級レストランのシェフたちからも高い評価を受けている。

昨年はオアフ島のアラモアナセンターに直営販売店をオープン。多くの人にその味を伝えるべく、ハワイ産アワビのブランディング化を試みているところだ。

「実は8年前に資本提供が実現したときに私は社長になったんですが、創始者だったアメリカ人や学者連中はみんな辞めてもらったんです。養殖は農業と同じ。毎日育っているものを見もせず、コンピューターで計算だけしていてはダメ。いまは南アフリカで養殖業をやっていたバイオロジストの女性が生産ディレクターとして工場を仕切っています。彼女はインターネットを見て、この仕事をやりたいと連絡してきたんですが、この人だという直感がありました。アワビの養殖に関しては世界一の知識と技術をもっていて、いまはアワビのタンクでナマコの養殖も始めています」

ハワイに自らの未来を賭け、同時にハワイの未来そのものをつくっていこうとする人の目は、力強い自信に満ち溢れていた。






生きたままメインランドに送り、添加物も調味料もまったく入れずに製造する缶詰は、ハワイ州のプロダクトオブザイヤーを受賞。


刻んだアワビをご飯にのせたポキ丼が地元の人たちに人気。


ハワイ島コナの養殖施設。技術システムが完成し、生産が軌道に乗るまでは約12年かかった。



KONA ABALONE
アラモアナセンターの1階フードコート内にある直営店。アワビの刺し身やグリル、ポキ丼のほか、柔らかな歯ごたえの缶詰も人気。
●1450 Ala Moana Blvd., Honolulu, HI ☎ 808-941-4120
営業時間9:30~21:00(日10:00~19:00) 不定休
http://www.bigislandabalone.com

text by Miho Sauser | photographs by Tetsuya Miura

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