原著は今年2月に発売され、どのようにすれば2050年までに排出量ゼロを達成できるか、ゲイツが自身の考えを披露している。大学に通っている人なら誰でも、メールアドレスと大学名を入力すればゲイツのブログ「GatesNotes」から電子版を無料でダウンロードできる。
ゲイツはブログへの投稿で、気候変動との戦いに必要な技術や政策のイノベーションを起こしていくうえでは、若者が先頭に立つ必要があると強調。「わたしの経験では、最も斬新なアイデアをもち、それを追求するエネルギーがいちばんあるのは若者だ」とエールを送っている。
ゲイツは本書のなかで、重工業や電力・運輸産業などで用いられている二酸化炭素排出方法に代わる、より安価で環境に優しい新技術に投資する必要性を訴えている。刊行当時に受けたフォーブスのインタビューでは、「解決が最も難しい問題は、鉄鋼やコンクリートといった分野、さらには航空燃料など運輸関連のものだ」と語っていた。
ゲイツが説く対処法をあまり高く評価しない人もいる。環境活動家のビル・マッキベンはニューヨーク・タイムズの書評で、「もの足りない」と本書を評した。マッキベンは、この本は「とりわけ風力発電や太陽光発電の広範な導入などの行動を阻むうえで、化石燃料業界がかつて果たし、いまも果たし続けている役割」に向かい合っていないと批判している。
ゲイツは元夫人とともに共同議長を務めるビル&メリンダ・ゲイツ財団で公衆衛生や世界の貧困といった課題に注力する一方、自身は気候変動問題にも取り組んでいる。2015年には、環境に優しい技術に資金をつぎ込むために、環境投資会社ブレークスルー・インベストメントを創業。同社の一部門は先週、英政府との間で4億ポンド(約630億円)規模のパートナーシップを結んでいる。
ゲイツが大学生に本を無償提供するのはこれが初めてではない。2018年には、スウェーデンの統計専門家ハンス・ロスリングらの世界的ベストセラー『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』の電子版を贈呈している。