一連の報道に接して連想したのは、1920年代ごろの自動車冒険。西欧では、地球上の、いわゆる奥地を自動車で探検するのがブームだった。岩山や砂漠など、変化に富んだ地形を走破すべく、全輪駆動車もバリエーションが生まれた。
SUVというジャンルの誕生は、1990年代である。でも、より高機能で、より高性能、を目指す自動車メーカーの動きをみていると、人間の冒険心がここにも発露しているように思えてくるのだ。ベントレーモーターズのプロダクトは、好個の例。W・O・ベントレーが1919年に創立したとき、目的はレースでの勝利だった。
いまのベントレーは、快適性の高いセダン、流麗なクーペやコンバーチブルを手がける一方、SUVにも心血を注いでいる感がある。ベンテイガの最高峰「スピード」は6リッターW12気筒エンジン搭載。SUVの可能性を極限まで拡大しようとしているように思えるのだ。
余裕あるサイズのボディと、大排気量エンジンの組み合わせは、1920年代、レースを席巻したベントレーにとっての黄金時代からの伝統だ。ベンテイガも、全長5.14メートル、全高1.75メートルの堂々たる車体でありつつ、矢のように疾走する。
コーナリング性能については、電子制御を活用したサスペンションやブレーキなどで、レールに乗ったように気持ちのよい動きを実現。ぜいたくなSUVでありながら、スポーツカーのような加速の二面性に、オーナーが魅了されるのが、よくわかる。一方、ベントレーも環境のためハイブリッド化が進む。ターニングポイントでひときわ輝く存在感が、スピードの魅力だろう。
ボディ外寸|全長×全幅×全高=5145×1995×1755mm
車両重量|2520kg
駆動形式|AWD
最高出力|467kW(635ps)/5000rpm
価格|33450000円
問い合わせ|https://www.bentleymotors.jp/
英国の薫りをたたえるウイスキーブランドとの協業
シングルモルトのスコッチウイスキー「ザ・マッカラン」が、2021年7月に、ベントレーモーターズと、「グローバルパートナーシップを結ぶ」と発表。内容は「カーボンニュートラル、持続可能な働き方、自然とのコラボレーションに関する専門知識を共有し、発展させていく」ことだという。ザ・マッカラン・ディスティラーズ社は、18年5月に、大胆なデザインのゲストハウスを完成させて話題を呼んだのも記憶に新しい。
同社では、30年までにカーボンニュートラルを達成すること、社会的に責任ある調達を推進すること、職人のグローバルコミュニティを育成することなどを目標に掲げる。一方ベントレーは、23年までに全モデルを電動化し、25年までにバッテリー駆動の車を発売し、30年までに全モデルを完全に電動化とする。伝統と革新の共存が、英国を代表する2社の主題なのだ。