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10'000 Hours / Getty Images

新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)が始まってから間もないころ、米マイクロソフトは社員約6万1100人を対象とした大規模な調査を行った。「電子メールやカレンダー、インスタントメッセージ、動画・音声通話、週間労働時間に関する豊富なデータ」を分析し、リモートワークの効果を見極めようとしたものである。

パンデミック前、米国で在宅勤務をする労働者は全体の5%にすぎなかった。その数が劇的に増えたときに、いったいどのようなことが起きるのか。それがマイクロソフトの知りたいことだった。パンデミックに入ってからほどなくして、米国内のリモートワーク率は一気に40%近くに高まり、そのうちホワイトカラーの労働者の大多数がリモートワークに切り替えるようになった。

マイクロソフトの調査結果はこのほど研究論文にまとめられ、科学誌「ネイチャー・ヒューマン・ビヘイビア」に発表された。研究ではリモート環境での従業員のパフォーマンスについて調べるため、マイクロソフトで全社規模の在宅勤務制が導入された2020年3月前後の従業員の働き方に関するデータを解析した。

論文によると、導入後に起きた変化のなかにはプラスとは言いがたいものもあった。たとえば「社内のフォーマルなビジネスグループとインフォーマルなコミュニティーのつながりが薄れ、サイロ化が進んだ」。グループを横断した協力に従業員が費やした時間は、パンデミック前に比べて約25%減少したという。

論文は、マイクロソフトでの全社規模のリモートワーク導入について「個々のグループ内でのつながりを増やし、内輪の結束を強める」ようにはたらいたと指摘。オフィス勤務から在宅勤務への移行によって「従業員が新たな協力者を増やすことも以前からの協力者を減らすことも少なくなった」結果、会社としての活力が減じたと総括している。

この研究でリモートワークの懸念事項として挙げられたのは、従業員がネットワーク全体を通じて新しい情報を得たり伝えあったりするのが以前よりも難しくなるという点だ。それを踏まえ、企業側に対しては、生産性とイノベーションを促進するために、従業員がグループの枠を超えて新しい情報を獲得・共有できるような施策や手順をあらかじめ整えておくよう提言している。

ただし、この研究に関しては慎重な見方も必要だろう。調査対象となった2019年12月から2020年6月は状況がまだ非常に不安定な時期だった。人々が暗中模索を続けていたころであり、先例として学んだり参考にしたりできるようなものもなかった。

こうした不透明な状況や人々の抱えていた怖れを考えれば、身近な同僚たちと結束を強めようとするのは当然の行動だとも言える。当時はまだ、ズームなどを積極的に利用していた労働者も少なかった。

だが、今では状況が変わっている。ほとんどの人はリモートワークの仕方を習得しており、オンラインでのやりとりは簡単でありふれたものになっている。もし今回の調査結果が、企業側によって従業員を再びオフィスに戻すための根拠として用いられるとしたら、嘆かわしいことだと言わざるを得ない。

この研究は調査が実施された当時の状況を考慮に入れて判断すべきものであり、その結果がそのまま現在の世界にも当てはまるとは限らないのだ。

編集=江戸伸禎

マイクロソフト

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