2017年のダボス会議のレポートは、SDGs関連で年間12兆ドル(約1300兆円)の経済価値と、最大3億8000万人の新規雇用の創出が見込まれると試算している。
特に2030年における市場機会が有望なのは、「食料と農業」「都市」「エネルギーと材料」「健康と福祉」の4つの分野。なかでも「モビリティシステム」「新しい医療ソリューション」「エネルギー効率」には注目だ。
「SDGs経営」のメリットは?
では、SDGsはビジネスとどのように結びつくのだろうか。
企業におけるSDGs推進は、「BDGs(Business Development Goals)」といわれる。実は、SDGsは、経営の4要素である「ヒト・モノ・カネ・情報」すべてに関連する目標だ。そのためSDGsに即した企業経営をすることが求められる。いわゆる「SDGs経営」である。
SDGsのゴールは、企業統治や環境課題への対応のみならず、働き方改革、優秀な人材の確保・採用、消費者対応、マーケティング、ブランディング、地域社会なども網羅するものだ。つまり、「株価水準」「ブランディング」「人材確保」などのすべての経営マターと関連付けられる。
「SDGs経営」のメリットは、対外的には「企業価値を高め、国際競争に打ち勝つことができる」こと。そして社内では、「社会問題解決型のイノベーションが期待でき、従業員のモチベーション向上にもつながる」ことである。
こうしたことから、SDGsは、単なる参照事項ではなく「重要事項」として扱われるべき目標であることがお分かりいただけるだろうか。実際に多くの経営トップが大きな関心を寄せていて、ビジネス界でも主流化している。
自社の中長期計画で何をすべきかをSDGsをヒントに考え、アクションしなければ「自社は10年後に潰れているかもしれない」という危機感を持つべきレベルだ。
CSRとの違いは「経営マター」かどうか
では、SDGsはこれまでの「CSR」とどう違うのか。それは、SDGsが「経営マター」であることだ。
その最大の理由が、ESG投資(環境:Environment、社会:Social、企業統治:Governance)の高まりだ。ESG投資家は、E・S・Gの各要素の判断にあたり「事業会社のSDGsへの貢献度」をひとつの指標として使っている。つまり、ESGとSDGsが「表裏の関係」になっているのだ。これは、SDGsが経営マターである「株価水準」にも影響するようになったことを意味する。
では上場していない企業や中小企業は関係ないのだろうかというと、まったくそのようなことはない。上場していない企業でも、何かしら上場企業との取引があるだろう。また、金融機関は融資などにあたりESGの視点でチェックしている。金融機関とつき合いのない企業も少ないのではないか。
さらに、SDGsは「世界の共通言語」なので、グローバルビジネスやグローバル化するサプライチェーンにも必須だ。