米南部2州、感染者急増で医療体制ひっ迫 政府や他州に支援要請

テキサス州のグレッグ・アボット知事(Montinique Monroe/Getty Images)

新型コロナウイルスの新規感染者数、入院者数がいずれも急増している米南部のテキサス州とフロリダ州が、医療体制のひっ迫により州外からの支援を求めていることが明らかになった。

テキサス州のグレッグ・アボット知事は8月9日、州保健当局に対し、ひっ迫する州内の医療体制を支えるため、他州の医療従事者を雇用することを指示。さらに、州内の病院に対しては、より多くの新型コロナウイルス感染者の受け入れを可能にするため、不急の手術を延期するよう要請した。

州内の学校関係者らは、アボット知事が今年5月に出した公立学校にマスク着用の義務付けを禁止する行政命令の撤回を求めている。オースティン、ダラス、ヒューストンなどの主要都市はこの命令に従わず、学校にはマスク着用を義務付けることを求める方針を表明した。また、サンアントニオとベア郡は10日、この知事命令を巡ってアボット知事を提訴している。

だが、知事は立場を変える姿勢を示していない。7月には、同州の市民は「政府による義務化ではなく、個人の責任において」決断する必要があると発言している。

一方、米ABCニュースはフロリダ州について先ごろ、州保健当局が連邦政府に対し、人工呼吸器の不足分を補うため、300台の供給を要請したと報じた。だが、ロン・デサントス知事はこうした状況の中でも、公立学校による子どもたちへのマスク着用の義務化は禁じるべきとの考えを固持。9日には、行政命令に違反した学区の教職員に対しては、「給与の支払いを差し止めることもある」としている。

トランプ前政権下で医務総監を務めたジェローム・アダムズ医師は、出演したCBSの番組で、州政府が公立学校に対し、子どもたちにマスクの着用を義務づけることを禁じるのは、「非良心的だ」と発言。政治が子どもたちを守ることを妨げているようであり、「医師として、公衆衛生の専門家として、非常に不安を感じる」と述べている。

両州の知事は、バーやレストランをはじめとする公共の場でのマスク着用を再び義務化すべきとの声にも耳を傾けておらず、(サービスを利用する際などに新型コロナウイルスワクチンの接種歴を明示することを求める)「ワクチンパスポート」の使用を禁止する行政命令も出している。

フロリダ州とテキサス州ではこのところ、直近7日間の平均でみた新規感染者数と入院者数が、国内で最も多くなっている。

保健当局はマスク着用を呼び掛け


米国がまた新たな感染の波に直面し、12歳未満の子どもたちがまだ一人もワクチン接種を受けていない中で近く新学期が始まることから、保健当局は各州に対し、住民に再びマスク着用を求めるよう強く呼び掛けている。

米疾病対策センター(CDC)は7月末、マサチューセッツ州でワクチン接種を完了した人の集団感染が起きたことを受け、感染力がより強まった変異株の「デルタ株」により感染者が増加しているとして、対策に関するガイドラインの見直しを実施。ワクチン接種を完了した人も、屋内の公共スペースではマスク着用し、感染者が増えている地域では屋外でも、人が多い場所ではマスクを着けることを推奨している。

編集=木内涼子

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