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世界37カ国、700万人が愛読する経済誌の日本版

SOURCE: BLOOMBERG FINANCE L.P

日本の経済政策への期待感から株式市場は活性化したものの、投資家はまだ懐疑的だ。
だが、筆者は意外な歴史的事実を引き合いに、今後の見通しは明るいと予想する。




安倍晋三政権は、日本の株式市場に投資家を呼び込むことに熱心に取り組んできた。ここまでの取り組みは評価できる。しかし、まだ日本株の資本コストを下げるまでには至っていない。上の図1からもわかるように、安倍総理の就任後、日本の株式市場における株価の上昇は、すべて利益(一株当たりの当期利益)の上昇を源泉としたものである。株式市場を介することによって株価に反映される、利益にかかる倍率は変わっていないのだ。

これは次の3つの点で重要な意味を持つ。まず、上場企業は集合体として、日本にとって最も重要な「資産」である。そして、国家は市場が自国の資産を高く評価してくれているときの方が安泰だ。
 
それは、2つ目の理由にもつながる。企業の株価は一種の通貨であり、国内外のさまざまな資産の購入に使用することができる。株価は高ければ高いほど、株主への還元につながる生産性の高い資産を購入することが可能だ。倍率とはすなわち、購買力なのである。

3つ目の理由は、株式市場全体の流れとして、日本企業の価値に対する長期的な見方が好転していないことを物語っていることだ。年金基金やコーポレート・ガナバナンスの領域で歓迎すべき変化があるにもかかわらず、市場から無視されているか、あるいは、それらの持続性に対する懐疑的な見方が強まったことによって相殺されてしまっている。

ここ数カ月、日本の株式市場で興味深いのは、国内の投資家が少しずつ前向きになってきているのに対して、海外の投資家が後ろ向きになってきている点だ。なかでも、「第3の矢に時間がかかり過ぎている」と考えている外国人投資家にその傾向がある。日本株のPER(株価収益率)が変わっていないことは、国内の楽観論と海外の悲観論が相殺し合っていることを表している。

日本が20年にもわたって下げ相場にあることと、グローバルな株価指数に占める日本株の割合を合わせて考えれば、1990年代以降に株価指数の上昇を上回る運用実績を挙げたグローバル投資家はみな、日本株の組み入れを抑えていたということを意味する。そして、これだけ長く機能した方程式を変えるのは容易ではない。


SOURCE:BLOOMBERG FINANCE

加えて、為替ヘッジなしのドルベースで取引を行っていた投資家たちは、日本株の上昇分を自国通貨高が相殺してしまい、これも世界の投資家たちが日本を無視し続けることにつながった(上:図2参照)。しかし、私はこの理論が成立する時代はそろそろ幕を閉じると考えている。

離婚率が激減した歴史的背景


YUZAWA YASUHIKO "RINKONRITSU NO SUJI NO SONO HAIKEI" IN KOZA KAZOKU

ここで、少し変わった例を取り上げて類推してみたい。先日、私が和敬塾で過ごした留学生時代からの友人が、ニューヨークの我が家に泊まった。ドイツのハイデルベルク大学でアジア研究プログラムを運営しているハラルド・フース教授で、2004年に「明治期結婚と離婚の近代化」という名論文を執筆している。彼の本からグラフを一つご紹介しよう(上:図3参照)。

日本の離婚率は、少なくとも江戸時代から明治初頭まで、西欧に比べてずっと離婚率が高かった。「甲斐国現在人別帳」に記載されている1879年の調査によれば、なんと山梨県に住む50代の女性の25%が離婚を経験していたという。
にわかに信じられないような数値で、読者諸賢も驚かれるのではないかと思う。しかし、図3からもわかるように、1898年に大きな変化が起きている。たった2年で、離婚率がほぼ半減したのである。

主な理由は、同年に新しい民法が施行され、それ以前よりも離婚しにくくなったことだ。明治期の多くの変化と同様、離婚に関する新しい法律には海外からの批判を軽減しようという思惑があった。
もう一つの狙いは、近代化によりかつての集落や「家」といった組織化原理が機能しなくなったため、核家族を強化することだった。
多くの歴史学者は、日本の歴史の転換点のほとんどは「トップダウン」で行われたと考えている。平城京や平安京の遷都、徳川幕府の開府、明治維新、太平洋戦争、どれをとってもそうである。

しかし、たとえ1890年代に離婚率が急落した原因がトップダウンによるものだったにせよ、この変化が社会全体でも好意的に受け止められたのは明らかだ。なぜなら、法の目をかいくぐる方法さえわかれば、離婚率はすぐに上昇したはずだからである(金融業界ではよく起こる現象だ!)。ところが、離婚率は第2次世界大戦後まで下がり続けている。

つまり、「トップダウンの変化に対し、社会がボトムアップで同意した結果、社会全体で移行した」と、私は考えている。
これは構造的に、アベノミクスと似ているのではないだろうか。社会全般が合意した事項について、マクロとミクロが協同して変化を推し進めようとしているのだ。そして、それはスピーディに行われている。

この事実からも、日本では一度パラダイム・シフトが起きてしまえば、その後もコンセンサスが崩れることなく持続することを示している。
確かに、日本の株式市場における利益に対するリターンの現在の株価収益率には、「アベノミクス」という代名詞で語られる、変化を望む国民の意思がまだ反映されていないかもしれない。しかし、いずれきっと上昇することだろう。

デービッド・スノーディ=文 徳田令子/アシーマ=翻訳

 

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