コネクテッドカーの「個人データ」収集をめぐる様々な懸念

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テネシー州の国立公園内で事故を起こしたホンダ・アコードの調査を進めていた警察は、車内から開封されたアルコールの容器を発見した。警察は、飲酒が原因で事故が起きたのではないかと考えた。

テネシー州のハイウェイパトロールはその後、運転手がどのような状態だったかを調べるために、エアバッグコントロールモジュール(ACM)のデータを調査した。ACMは、事故車両のおおよその速度、ブレーキ、スロットルの量などを記録し、そのデータは運転者が飲酒運転をしていたことを証明したり、事故に至るまでコントロールされていたかどうかを調べるために利用される。

エアバッグモジュールは通常、事故前の数秒間と事故の瞬間のデータを記録し、それ以外の情報はすべて消去されるという。

結果的に、この事故のドライバーは起訴を免れたが、連邦政府や地方自治体の法執行機関にフォレンジックデータを提供するBerlaの創業者のベン・ルメールによると、ACMは、車内で起こっていることを記録する数多くのモジュールのひとつにすぎないという。

車の位置情報は、エンターテインメントシステムやブレーキランプモジュールに記録される場合があるという。また、携帯電話がインフォテインメント機器に接続されている場合、その携帯電話のすべての連絡先や、メーカーや固有の識別番号などの情報を吸い上げることが可能だ。さらに、ネットワークに接続された車のデータは、各モジュールの間を行き交うが、何を記録するかは各モジュールの開発者に委ねられている。

消費者が自動車から個人情報を削除するための無料ツールを提供する団体「プライバシー・フォー・カー(Privacy4Cars)」の創設者のアンドレア・アミコは、警察がイベントデータレコーダー(EDR)にアクセスする際には、捜査令状が必要になるが、その他の自動車のパーツにアクセスする際には、令状が必要とされない状況を危惧している。

ネットにつながる車はデータの宝庫


アミコはさらに、車の所有者が許可した場合、政府は令状なしで車のネットワークを検索することができることを懸念している。例えばレンタカー会社や、ローンを提供する銀行が、警察に許可した場合、運転者の同意を得ずに捜査が可能になる。「これは非常に問題だと思う」と彼は述べている。

また、警察がメーカーに出向いてデータを入手する可能性もある。GMのOnStarは繰り返し警察に位置情報の提供を求められており、GeotabやSpireonなどの車両管理プロバイダも同様の情報提供を求められているとされる。

しかし、ルメールは、自動車メーカーや部品メーカー、そしてその広告パートナーが、自動車のネットワーク上のすべてのデータをどのように利用しているのか、ということの方が重要だと考えている。フェイスブックやグーグルらがユーザーのデータを広告主に提供して利益を得ているように、自動車メーカーも顧客の情報を使って同じことをしているのだ。

人々のデータがどのように使われるかという点では、自動車業界もインターネット業界と同様に複雑だ。例えば、GMのプライバシーポリシーには、「過去12ヵ月間に、ビジネスまたは商業目的で、アイデンティティやインターネットなどの行動履歴を第三者に開示または販売した」という記述がある。

ルメールは次のように述べている。「私たちはアップルやグーグル、自動車メーカーに自分のプライバシーを明け渡しており、企業は政府よりもひどいやり方でそれを利用している」

編集=上田裕資

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