運動が身体にいいことは歴然ですが、弊社が展開するフィットネスは、身体的なことはもちろん、心の部分を重要視しているんです。運動をすることによって幸せを感じること、リフレッシュすること、そういう心身の健康のサポートをさせていただいています。
──仲田さんのお話を伺っていると、主体として「気持ちがいい」とか「幸福である」などのポジティブな感情を持つことが脳にとっても重要だとわかるのですが、ただ、意外に日本人はその主観に気づかない人もいるのではないかと思います。客観的にAIなどのテクノロジーの力を使って、各個人の豊かさの感じ方だったり、このぐらいの運動量で幸せに感じるといったパーソナライズなことができやすくなる未来はあり得るのでしょうか
仲田:あり得ると思いますし、業界としても、そして、GAFAや弊社のサービスとしてもそこに向かっていくというのが現状です。感情的なところのフィードバックをどう取るかは各社の課題ですが、表情から取ることも1つの研究ですし、そのフィードバックデータを使い、我々はAI、動作解析をし、ペースであったり、フォームのスコア化といったデータをもとに、それぞれの人に合わせてパーソナライズしていきます。そして、その人にあった適切なフィット、適切なプッシュを作り出していくんです。
──ちなみにその全ての解析が進んだときに、パーソナルトレーナーは何をすることになるのですか。
仲田:それはすごくいいご質問で、人の役割というのは必ず変わっていくんです。
たとえば、今の人というのは「人」に言われることで、感情的な刺激を受けるんですよね。機能的なこと、レップカウントとか、ペースのスコア化とかは機械でいいんです。でもAIに「8時に起きないとダメですよ! 会社に遅刻しちゃう」とか、「エクササイズしましょう」と言われても、「また機械が何か言ってるな、切ろう」となりますよね。だからこそ、人間のエモーショナルなところ、感情的なところに働きかけるのがトレーナーの役割だと思っています。
では、AIネイティブ、デジタルネイティブと言われる人たち、AIで教わることに対して違和感を持たない人たちが出てきたらどうするのか。それは、新しいものを作ることなどが人間の役割になります。この世の中で、次に何が必要なのかを想像していくことです。つまり、人間が人間たる所以であるところが重要になるのです。トレーナーで言えば、この人がどうやったらやる気になるのかというのを考える。また、フィードバックのバリエーション、褒めてあげればいいのか、叱咤激励するのがいいのかを考える。感情を持つ生き物ならではの能力を生かせない限り、どんどん使えない人間になってしまうと思います。
そもそも、創造するという分野は、AIはなかなか入ってこれないんです。唯一人間ができることなんです。ただ、日本人が得意ではないところでもある。だからこそ、私たち日本人は危機感を感じるべきなところなんです。