アボットによれば、第1四半期の全世界における売上は約105億ドルだったが、そのうち新型コロナ診断・検査関連の売上は22億ドルを占めたという。同社は、幅広いエスタブリッシュ医薬品(医療現場で長く使われている標準的な治療薬。特許期間が満了した先発医薬品[長期収載品]と後発医薬品[ジェネリック]が含まれる)、糖尿病患者用の医療デバイス、診断機器を販売している。
現在も増加を続けるコロナ診断関連の売上に後押しされ、アボットの第1四半期の純利益は、前年同期の5億6400万ドル(1株あたり30セント)から3倍に増加し、17億9000万ドル(1株あたり1ドル)に達した。第1四半期の総売上は、35%増の105億ドルだった。
アボットのロバート・フォード最高経営責任者(CEO)は、4月20日午前に行われた第1四半期決算に関する収支報告のなかで、アナリストらに対して「全世界において、迅速検査への需要シフトが継続している」と語った。「4月19日から、主要な小売業者への検査キットの出荷を開始した」
アボットのコロナ検査キットは、病院検査室での使用だけでなく、パンデミックの最前線に立つドライブスルー検査所やクリニック、アージェントケア・センター(急病診療所)といった迅速検査の現場での使用にも対応するもので、2020年を通じて販売が展開されてきた。アボットが製造するコロナ検査キットは、ライバルのベクトン・ディッキンソンやロシュの製品とともに、複雑なウイルスを検出し、必要とする患者に治療を提供するための鍵を握っている。
アボットの売上を継続して押し上げている同社の迅速抗原検査キット「BinaxNOW Covid-19 Ag Card」は、2020年8月に米食品医薬品局(FDA)から「緊急使用許可」を受けたものだ(医師の処方に基づき、感染が疑われる場合に限り使用が承認されていた)。その後、FDAは2021年3月末に市販を認め、無症状の人が自宅で検査を行うことを許可。これにより、学校や職場での定期的なスクリーニング検査がより容易になった。
この検査キットは、販売単価が安価で15分以内に結果がわかり、分析装置が不要で学校や職場などの現場で処理できることから、大きな変革をもたらす可能性があるとされている。ほかの検査と同様、専門技術を持つ健康な人が綿棒で鼻腔をこする必要はあるものの、この検査キットは、「ラテラルフロー技術」を使用していることや、クレジットカードほどの大きさであるという点で、妊娠検査キットに似ていると言える。
BinaxNOWは、4月下旬からウォルマート、ウォルグリーン、CVSヘルスの小売店舗での市販が開始され、幅広いドラッグストアで処方箋なしで購入できるようになったばかりだ。
アボットのフォードCEOによれば、処方箋なしのコロナ検査へ移行する傾向は、すでに米国外で見え始めており、米国でもすぐに浸透すると予想されるという。
「(そうした検査は)簡単で、価格も手ごろだ」とフォードは20日午前、アナリストらに語った。