クルーズ船は、米疾病対策センター(CDC)から米国の港利用許可が下りるのを待たずに、カリブ海諸国など米国以外の港を出発地や寄港地にするよう航路を調整している。あるクルーズでは、2021・22年の世界旅行チケットを1室4万ドル(約440万円)で発売したところ、1日で売り切れた。
そうなるともちろん、旅客によるウイルス拡散を防ぐ方法も必要だ。そこで欧州連合(EU)加盟27カ国は、「デジタルグリーン証明書」の共同導入に合意した。
だがEUは同時に、この証明書を持たない人を差別しないことでも合意した。同証明書を「パスポート」と呼ばず、呼び名にワクチンが含まれていないのはそのためだ。
デジタルグリーン証明書は、携帯電話にダウンロードできるものになる。発行に当たっては、ワクチン接種は必須条件とはならず、新型コロナウイルスに感染し回復した人や、出発前に検査で陰性になった人も取得できる。こうすることで、ワクチンを接種した人とそうでない人を差別しないようにしている。
ニュースサイト「ザ・ローカル」によると、導入は6月中旬までに行われる予定。最初は27加盟国の国民と居住者を対象に導入されるが、ゆくゆくはEU外の国でも利用可能とする計画だ。
証明書については各国が個別のルールを定めることもできる。例えばハンガリーでは、EU加盟国の大半が使用していないロシアの「スプートニクV」ワクチンを使用している。各国は、それぞれが希望するワクチンを証明書発行要件とすることができる。
EU加盟国の国籍を持たない人は、訪問予定の国に対してデジタルグリーン証明書の発行を申請できる。ワクチン接種証明に関する規則は国籍保有者と同じで、EUが認可したワクチンに加え、各国はその他のワクチンを受け入れるかどうかを決められる。
この証明書は、少なくともEUでは、人々の各国間の往来を完全復活させる上で必要な書類の標準として確立しうるものだ。
他の地域はどうだろう? CBSニュースのグリーンバーグによると、現在さまざまな国や地域で40前後のデジタルプログラムが開発されているものの、文書形式や、偽造防止のため情報読み取り端末で統一化されたものは存在しない。旅行誌コンデナスト・トラベラーが指摘しているように、米国がどうやってワクチン接種の有無を確認しようと計画しているかはまだ分からない。
とはいえ、ワクチン接種を済ませた人は、世界のどこにいようとも、国の保健機関(米国の場合はCDC)から証明書を交付されている。こうした証明書は、大半の国で有効だ。