子どもたちにとってのサードプレイス。自宅と学校以外の「居場所」が果たす役割 


この川崎市子ども夢パークのような、自分らしく安心して過ごせる居場所では、子どもの興味や関心は、暮らしや遊びのなかの小さなきっかけから始まる。

不登校や引きこもりの子どもや若者の居場所づくりに35年前から関わり、川崎市子ども夢パーク・フリースペースえん総合アドバイザーを務める西野博之さんによれば、最近子どもたちに人気なのは「カカオの実からチョコレートをつくる企画」だという。

カカオの実をすりつぶす
カカオの実をすりつぶす

これもきっかけは、「チョコレートって何からできているの?」という子どもたちの問いかけだった。自分で考え、問いを立て、探求する力が動き出すこの環境で、西野さんたちは、学校教育がいままさに切り替えようとしている「アクティブ・ラーニング」を、先駆けて実践してきたと言えるだろう。

子どもたちのアイデアと地域の大人たちの協力により、「学び」のコンテンツは次々に生まれている。うちわづくり、実験授業、楽器の演奏、カレーを材料からすべて育ててつくるなど、それぞれ参加したい人が楽しみながら挑戦できる仕組みだ。ここで子ども時代に、「サイエンスミニシアター」という仮説実験授業に出会って興味を持ち、アメリカの大学で物理を教えるまでになった人もいるという。

「子どもの育ちには、無駄に見える時間やスキマも大事。好奇心の芽を摘まず、その子の力を信じ、自ら伸びていこうとすることに対して邪魔をしないことです。子どもたちが試行錯誤して失敗しながら、驚きや落胆、喜びの繰り返しのなかで体感し、思考化するプロセスを大事にしています」(西野さん)

多世代、多様な人が互いに出会い、相手を生かし合う場


東京都小金井市にあるNPO法人「地域の寄り合い所 また明日」は、保育園、認知症のデイサービス、そして地域の寄り合い所という3つの機能を併せ持つ福祉施設。乳幼児とお年寄りが共に過ごす場所を、広く地域の人たちに開放しているユニークな施設だ。

また明日
「地域の寄り合い所 また明日」の様子

公園の前にある入口には、門もオートロックもなく、誰でも気軽に立ち寄ることができる。子育て中の親子や近所に住む人たちがかわるがわる顔を出し、お茶を飲みながら、子どもたちやお年寄りとゆったりと流れる時間を楽しむ。学校の放課後には地域の小中学生が「ただいま〜!」と声を上げて遊びにくる。
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文=太田美由紀

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