映画プロデューサーのキャメロン・ラム(Cameron Lamb)は昨年、ノンフィクション・ストーリーのアプリ「アレクサンダー(Alexander)」をローンチした。このアプリの特徴から、オルタナティブな物語の意義を考えてみたい。
数年の構想を経て、ひっそりとローンチ
ラムは、ニューヨークを拠点に世界各地で活躍するオーストラリア人の映画プロデューサー。2014年には、菊地凛子が主演・製作総指揮者の一人を務めた映画『トレジャーハンター・クミコ』をリリースするなど、ノンフィクションの物語に基づいた映画を製作してきた。
彼の作品はドキュメンタリーではないが、現実世界の物語が映画製作を駆り立ててきたものだと彼はいう。Filminkのインタビューで「ありふれた世界とは違うところに存在する、わたしたちが気づいていない人々や、スポットライトが当てられていない人々のすばらしい物語を常に探し続けている」と語っている。
一方、こうした物語を発信する適切なプラットフォームが存在せず、ラムは自分自身で手がけるように動き出す。数年の構想を経て、昨年11月、ノンフィクションの物語に特化したサブスクリプション型のiOSメディアアプリ「アレクサンダー」をリリース(アンドロイド版は近日リリース予定)した。
(c)Alexander Technology & Media Limited
アレクサンダーという名前は、古代エジプトのアレクサンドリア図書館にちなんだものだ。2週間の無料トライアルがあり、その後は月額3.99ドルもしくは年額39.99ドルの価格設定となっている。
オルタナティブなストーリーテリング
物語を伝えるアプリとして、アレクサンダーには3つの特徴がある。
一つは、各国の作家たちによるオリジナルの物語。ラムは、ポッドキャスト「Monocle On Saturday」のインタビューで、「北米や英国という典型市場からは見過ごされている可能性がある、インターナショナルな作家にとくに焦点を当て、いまの時代にとってもっと重要な物語を世界隅々に伝えること」がアレクサンダーのコンセプトであると説明している。
アプリには、ナイジェリア人作家のチゴズィエ・オビオマ(Chigozie Obioma)や中国系イギリス人作家のグオ・シャオルー(郭小櫓、Xiaolu Guo)らが名を連ねる。2週間ごとに新しいコンテンツが配信され、一度配信された物語はいつでもアクセス可能だ。