映画プロデューサーが自ら「メディアアプリ」を立ち上げた理由

キャメロン・ラム(右、Getty Images)


二つ目の特徴は、物語を体験するインターフェイス。アレクサンダーでの物語は、ショートムービー、文章、オーディオという3つのメディアを通じて体験できるようになっている。
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たとえば、「ジュゴン(Dugong)」と題された物語は、ショートムービーでジュゴンの世界に没入し、その後、本編を読んだり、聴いたりすることができる。“読む”と“聴く”の体験の行き来はシームレスだ。たとえば、物語を読み始めたが、途中から移動しなくてはならないという状況になれば、指定した単語からオーディオに切り替えることができる。


インタフェースの特徴(Alxr.com)(c)Alexander Technology & Media Limited

三つめの特徴は、ムービーのナレーションや物語のオーディオ版が、著名な俳優たちによって語られるという点だ。たとえば、デイヴィッド・テナントやヘレナ・ボナム=カーター、ショーペー・ディリスーなどが物語を朗読し、オーディオ体験をより豊かなものにしている。
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ショートムービーを使った語りや俳優たちの起用は、映画プロデューサーというラムの専門分野。それにより実現するクオリティの高さは、アレクサンダーの競争優位性構築に寄与している。



脱欧米中心、脱植民地主義、脱白人至上主義などの切り口で、いままでの「主流」と異なるオルタナティブな物語を伝えるという考え方は、これからもますます重要になってくる。

グーグルの元CEOエリック・シュミットの娘、ソフィー・シュミット(Sophie Schmidt)は2020年5月に、ウェブマガジン『Rest of World』をリリースした。とくにシリコンバレー偏重になりがちなテクノロジー分野に関する、サブサハラ・アフリカ、南アジア、ラテンアメリカ、中東・北アフリカのストーリーに特化したメディアだ。

映画界でも、2015年に #OscarSoWhite が拡散されるなど、ハリウッドやエンターテインメント業界における白人偏重の問題がより頻繁に議論されるようになっている。根強い構造的な問題はすぐに解決するものではないが、少しずつ変化も起きている。たとえばアカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーは、昨年9月、社会の人種・ジェンダーの多様性をより的確に反映させた作品内容や製作チームを評価するために、作品賞ノミネートに関する新たな基準を提示した。

パンデミックで旅が難しくなったいま、コンテンツは多様な価値観を知る貴重な手段となっている。オルタナティブなストーリーテリングが主流化する「ニュー・ノーマル」が、訪れる日も遠くはなさそうだ。

連載:旅から読み解く「グローバルビジネスの矛盾と闘争」
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文=MAKI NAKATA

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