恩赦を受けたメンバーには、スティーブ・バノン元首席戦略官が含まれていることが広く報じられたが、テクノロジー業界で注目を集めるのが、ここにグーグルの自動運転部門の元責任者で、同社から企業秘密を盗み出した罪で禁固刑を宣告されたアンソニー・レバンドフスキ(Anthony Levandowski)が含まれていたことだ。
かつてグーグルの自動運転部門の技術責任者を務めたレバンドフスキは、ウェイモがグーグルから分社化された直後の2016年に、ウェイモを退社した。彼は、ウェイモを離れる前に、1万4000以上のファイルを密かにダウンロードして持ち去り、その後、ウーバーの自動運転部部門の幹部を務めていた。
レバンドフスキは、2020年8月に18カ月の禁固刑を宣告されていた。
トランプ政権は開示資料の中で、レバンドフスキが「過去の行いに対して多大な代償を払い、今後は自身の才能を公共の利益のために捧げようとしている」と述べている。さらに、レバンドフスキの事件を担当したウィリアム・アルサップ判事の言葉を引用し、レヴァンドウスキーを 「我が国が必要としている輝かしい、画期的なエンジニア」と評している。
レバンドフスキは裁判で、刑務所での禁固刑ではなく、自宅監禁を求めていたが、アルサップ判事はこれを拒否し、「エンジニアが企業秘密を盗むことを許してはならない。彼には刑務所がふさわしい」と述べていた。ただし、彼が刑務所に収監されるのは、新型コロナウイルスの脅威が去ってからとされていた。
ホワイトハウスによると、今回の恩赦は、著名投資家のピーター・ティールやOculus VRの創設者パーマー・ラッキー、ハリウッドのエージェントであるMichael Ovitzらの強力な後押しを受けてのものだという。
ウェイモを退社した直後の2016年1月にレバンドフスキは、長距離トラックを自動運転化するスタートアップの「Otto」を創業したが、その数カ月後にウーバーが同社を買収した。そして、2017年2月に、グーグルの親会社アルファベットがウーバーを、知的財産権の侵害で訴えた。
レバンドフスキはもともと、2007年にソフトウェアエンジニアとしてグーグルに入社し、ストリートビューの開発に携わっていた。その約1年後、グーグルでの勤務と並行して、彼は「Anthony’s Robots」と呼ばれるスタートアップを立ち上げ、自動運転テクノロジーの開発を開始していた。