Skyroraは、昨年12月23日にファイフにあるテスト施設で、Skyrora XLのアッパーステージを450秒間に渡って燃焼する試験を行い、成功した。試験では、実際の打ち上げと同じ状況のもとでシミュレーションが行われた。
アッパーステージは、高さ22メートルのSkyrora XLの最上段ロケットだ。同社によると、今回のテストで宇宙飛行の準備が整ったという。「アッパーステージは、Skyrora XLのサードステージで、理想的な構造を持つ」とSkyroraで打ち上げの責任者を務めるRobin Hagueは話す。
Skyroraによると、サードステージは単体でOTV(軌道間輸送機)として機能することができ、軌道上に衛星を投入するなどの活動が可能だという。Hagueによると、サードステージはニュージーランドの「ロケットラボ(Rocket Lab)」が開発したElectronロケットのキックステージである「フォトン(Photon)」に似ているが、より性能が優れているという。
OTVは炭素繊維でできている。エンジンは3Dプラインターを使って作られており、推力は3.5キロニュートンある。燃料は、ケロシンに酸化剤として過酸化水素を加えた液体燃料で、球形タンクに保管されている。
OTVは打ち上げ後、軌道にデプロイされ、搭載している315キロの衛星を投入する。OTVは自ら飛行することができるため、新しい衛星の打ち上げに伴って用済みになった衛星を回収することが可能だ。
「OTVは、最初のミッションを遂行した後、2つ目の作業を行うことが可能だ。スタンドアローンの宇宙船として軌道上に残し、エンジンを最大15回まで再点火することができる」とSkyroraのCEO、Volodymyr Levykinは話す。
スペースXの衛星コンステレーションを追撃
Levykinは、SkyroraのOTVを使えば、メガコンステレーションの構築を進める英国の「OneWeb」向けに衛星の交換作業を行うことができると考えている。イーロン・マスクのスペースXも「スターリンク(Starlink)」計画でメガコンステレーションの運用を進めており、OneWebにとってはライバルに当たる。
「我々は、OneWebの衛星を打ち上げ、古い衛星を回収することができる。これこそが、我々のビジネスの将来像だ」とLevykinは話す。しかし、このようなミッションを真剣に検討する前に、Skyroraはまずロケットを宇宙に打ち上げてみせる必要がある。
同社は、低高度での打ち上げテストを数回実施している。直近では、2020年8月に長さ3.3メートルの「Skylark Micro」ロケットをアイスランドから打ち上げ、高度は27キロメートルに達した。
2021年前半には、昨年テストした長さ12メートルの「Skylark L」ロケットを打ち上げる予定だ。このロケットは、宇宙空間との境界線である地上100キロメートルに達することが可能だ。
「Skylark Lの打ち上げに成功すれば、我々にとっては非常に大きなマイルストーンを達成することになる」とLevykinは言う。しかし、Skyroraにとって最も重要な目標は、「Skyrora XL」ロケットを軌道に到達させることだ。最初の打ち上げは、今のところ2022年末から2023年初めに予定されている。
同社は、今後2年間でSkyrora XLの第1、第2ステージのテストや、エンジンの地上燃焼試験を行う予定だ。
Skyroraは、独自の移動式打ち上げ台を使うため、打ち上げ施設の選定は柔軟に行うことができるが、まずはどこが利用可能か確認する必要がある。