3. バーチャルペイシェント
人間の代わりにシミュレーションを用いて、より迅速かつ安全な臨床試験を行うという目標は、容易に聞こえるかもしれませんが、それを支える科学は単純ではありません。人間の臓器の高解像度画像から取得したデータは、臓器の機能を制御するメカニズムの複雑な数式モデルに取り込まれます。そして、その結果として得られた計算式をコンピュータアルゴリズムが解き、本物と同じように動作するようプログラムされた仮想臓器を生成。人間に代わって、仮想臓器や仮想身体システムによって薬剤や治療の初期評価が行われることで、評価プロセスのスピードと安全性が向上し、費用を抑えることができます。
4. 空間コンピューティング
空間コンピューティングは、バーチャルリアリティ(VR)や拡張現実(AR)のアプリにすでにみられる、物理的な世界とデジタルな世界を結びつける新たなステップです。VRやARと同じく、空間コンピューティングは、クラウド経由でつながれたモノをデジタル化し、センサーやモーターが相互に反応することで、現実世界のデジタル表現をつくり出します。さらに、空間マッピングが加わることで、コンピュータという「調整役」が、デジタルな世界と物理的な世界を移動するヒトのように、モノの動きとやり取りを追跡、制御できるようになります。このテクノロジーは、産業、ヘルスケア、輸送、家庭における、ヒトと機械のやり取りの方法に新たな進展をもたらすことが期待されます。
スマートウォッチがヘルスケア分野でも使われている(Photo by Unsplash)
5. デジタル医療
デジタル医療がすぐさま医師に取って代わることはないでしょう。それでも、状態をモニターしたり治療法を管理したりするアプリが、医師によるケアを強化し、医療サービスの利用に制約がある患者のサポート役となる可能性はあります。すでに、多くのスマートウォッチにより、装着者の不整脈が検出できるようになっており、呼吸障害やうつ病、アルツハイマーなどに有益な類似のツールも使用されています。さらに、センサーを搭載した錠剤も開発されています。この錠剤に含まれたセンサーにより、データがアプリに送信され、体温、胃の出血、発がん性のあるDNAなどの検出をサポートします。
6. 電動航空機
電気推進が航空機移動による二酸化炭素排出量と燃料費を削減し、騒音の大幅な低減を実現できるかもしれません。エアバスやNASAなど、多くの組織がこの分野の技術に取り組んでいます。電気による長距離飛行は、まだ実現に遠く、コストや規制上のハードルもありますが、この分野には、多額の投資が行われています。開発途上にある電動航空機プロジェクトは、およそ170にのぼり、その多くは、個人や企業向け、通勤用途ではあるものの、エアバスは、100人乗りの電動航空機の飛行態勢が2030年にも整う可能性があるとしています。