7. 低炭素セメント
コンクリートの主要な構成要素であるセメントは、現在、年間40億トン生産されています。生産工程では化石燃料の燃焼が必要とされ、その二酸化炭素排出量が世界の排出量に占める割合はおよそ8%。今後30年余りにわたって都市化が進むにつれ、セメントの生産量は年50億トンに増加すると予測されています。こうした中で、研究者やスタートアップ企業が、低炭素化を目指すアプローチに取り組んでいます。工程で使用する原料のバランスの微調整、排出を削減するためのカーボンキャプチャー(二酸化炭素回収)や貯留技術の導入、コンクリートからセメントを完全に除去するといった取り組みがその例です。
8. 量子センシング
曲がり角の先が「見える」自動運転車や、人間の脳の動きをモニタリングできる携帯型スキャナーを想像してみてください。量子センシングは、これらのことやそれ以上のことを実現可能にするかもしれません。量子センサーは、異なるエネルギー状態の電子の差を基本単位として活用するなど、量子という物質の本質を利用することにより、極めて高い精度で作動します。こうしたシステムの多くは複雑で高価ですが、より小型で手頃な価格のサンプルの開発が進められており、新たな活用の道が開かれることが期待できます。
グリーン水素が促す脱炭素化(Photo by Unsplash)
9. グリーン水素
水素の燃焼時に生成される副産物は水だけです。また、水素は、再生可能エネルギーを利用した電気分解で生成することで「グリーン」になります。今年に入り、グリーン水素市場が2050年には12兆ドル規模に拡大するとの予測が出されました。その理由は、グリーン水素が、海運業や製造業など、高エネルギー燃料を必要とするため電化がより困難な分野において脱炭素化を促し、エネルギー転換における重要な役割を担う可能性を持っているからです。
10. 全ゲノム合成
微生物に導入する遺伝子配列の設計に必要なテクノロジーの向上により、かつてないほど大量の遺伝物質のプリントと、より広範なゲノム改変が可能になるかもしれません。これにより、ウイルスがどのように拡散するかについての洞察を得たり、ワクチン製造やその他の治療法の開発に役立てたりできるようになります。将来的には、バイオマスや廃ガスから化学製品や燃料、建設資材をつくる持続可能な生産を促進するかもしれません。さらには、この技術的向上を利用して、科学者が病原体に耐性のある植物を設計したり、私たちが自分のゲノムを書いたりすることすら可能になります。誤用のおそれも当然ありますが、遺伝子疾患の治療の扉が開かれる可能性もあります。
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(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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