「リバースロジスティクス」における新しいソリューション
さらなるECの浸透により、過去、類を見ないほどの物量を配送する必要性が高まっているが、山本氏は「米国では物を購入した後に返品をする顧客が非常に多い」と語る。
NRFのデータによれば、2017年時点で米国の全小売売上高に占める返品割合は全体の約10%で、金額としては約3510億ドルに達している。さらにECの場合の返品率は、約30%にも跳ね上がり、アパレルに限っては、返品率が約70%に上るというデータもある。返品の数は、これからのホリデーシーズンで、特に急増する傾向にある。
Optoro創業者のTobin Moore (左)とAdam Vitarello (右)/写真:tech.coより
多くの小売業者にとって、悩みの種である返品物流の領域は「リバースロジスティクス」とも呼ばれるが、同氏によれば、近年注目されている企業の一つが、Optoroという2010年ワシントンD.C.創業のスタートアップだ。返品商品の種類や状態に応じて、AIにより最適な価格や再販フローを予測するプラットフォームを構築し、小売業者が顧客から返品された商品を容易に再販売することをサポートしている。
顧客には、Best Buy、IKEA、Targetなど大手小売業者が名を連ねており、同社創業者のTobin Mooreは、「返品商品を再活用するオプションを増やすことは、サーキュラーエコノミー(廃棄物を出すことなく資源を循環させる経済の仕組み)の構築に不可欠」とも語る。
ニューノーマルの変化は、歴史が早まっているだけ
楽天USAの新規事業の一環で、RakuNestというコワーキングスペースを米国で運営しながら、日本企業の事業支援にも携わる山本氏は、「ニューノーマル時代のトレンドを追うことも大切だが、例えば後払い決済やリバースロジスティクスなども、全くの新しい潮流ではない」と語る。
「これまで比較的ゆっくりと変化してきたものが、コロナによって急激に歴史が早まっているだけ。これからの事業創出において重要なことは、全くの新しい変化が来るのではないかと受動的に対応するのではなく、起こりうる変化を積極的に予測し、事業を通じてその変化を自ら起こしていくという“”主体性であり、それをやりきる “実行力”ではないか」
楽天USA本社内に構えるコワーキングスペース RakuNestの様子
RakuNestも、新型コロナウイルスの影響でコワーキングスペースとしては一時的に閉鎖を余儀なくされているが、新しい取り組みをどんどん仕掛けているようだ。オフィススペースの提供に留まらない、コミュニティとしてのRakuNestの価値を再定義し、Digital RakuNestという新しいオンラインメンバーシップのサービスの提供を開始した。
山本氏は、「会員企業に対して、シリコンバレーから最新テックトレンドやスタートアップ情報を提供するだけでなく、他企業とのネットワーキングの機会も盛り込んでいきます。有難いことに既に多くの企業から引き合いがあり、今後とも企業の米国進出の是非に関わらず、事業開発や新規事業で成功を目指す全ての日本企業のお役に立ちたい」と語る。RakuNestの動きからも、目が離せない。
急速な生活様式の変化が求められたことにより、これまで埋もれていた課題が浮き彫りになってきた。ニューノーマル時代を制するのは、それをいち早く察知し、解決まで導く実行力のある企業なのだろう。