「学びにおいて『場』は大きな役割を果たす」──小林亮介はそう断言する。全寮制のハーバード大学での実体験からだ。
「食堂を通らないと自室に行けない動線設計(ハード面)、無料開催の飲み会(ソフト面)……多様な人との交流をうながす仕組みが、寮を運営する大学によって緻密にデザインされ、それが大学の価値だと広く認知されていた」
例えばフェイスブックの創設メンバーは異なる専門性を持つ者同士がこの寮で交流し、事業を立ち上げた。学びの仕組みが作為的に用意されていることに衝撃を受けた。
「学ぶ」とは知らない世界を知ること。特に社会に出れば、異なる年齢・経験・価値観の人から学ぶことは多い。でも、「日本の学校教育ではその学び方を身につけられないまま社会人になる」と小林は言う。
2011年、小林はレジデンシャル・カレッジ事業に取り組もうと「HLAB」を立ちあげた。短期サマースクールの開催から始まり、2020年12月には東京に全寮制の学び舎「下北沢レジデンシャル・カレッジ(仮)」を開業する。
「今後は多様な他者との競争が激化する。縦割り社会や会社の枠にとらわれていたら戦えない。違いをリスペクトし合い、自分やチームの力に変えるスキルが必要になる」
HLABの卒業生2000人超のコミュニティを生かし、小林は次世代のスキル、リーダー育成を目指す。
こばやし・りょうすけ◎1991年、東京都生まれ。2009年ハーバード大学に入学。11年に高校・大学生対象の教育事業HLABを立ち上げ、14年に法人化し代表就任。20年12月「下北沢レジデンシャル・カレッジ(仮)」開業予定。