米国の学生ローンの実態、一律の返済免除で格差拡大の可能性も

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米国の学生ローン債務残高は1兆6000億ドルに上るが、借りているのはどんな人たちなのだろうか。それは、一般の予想に反した人たちだ。詳しく見ていこう。

学生ローンに関する最新統計から、債務者は4500万人で、債務総額は1兆6000億ドルを超えることが明らかになった。しかし、これらの統計の数字からは、学生ローンの借金を抱えているのが具体的にどのような人たちなのかは見えてこない。

そこで、連邦政府の学生ローンに関する、米シンクタンクのブルッキングス研究所による最新調査と連邦準備銀行のデータを詳しく見てみよう。連邦政府学生ローンは、学生ローン残高総額に占める割合が90%を超えている。

1. 学生ローン債務の大半は、高額所得者の借金

・「所得が最も高い世帯層」は、学生ローン債務残高の60%を占めており、返済総額のうち約75%を占めている。
・「所得が最も低い世帯層」は、学生ローン債務残高の20%未満で、返済総額のうち10%にあたる。

このデータからは、大学を卒業すれば所得が増え、それに伴って返済できる金額も多くなるという経済の現実が透けて見える。学生ローンを抱えている低所得層は、所得連動型返済プランに入っている可能性があり、その場合は学生ローンの支払月額が減り、ゼロになることもある。

2. 学生ローンの借金が10万ドルを超える人はごくわずか

・学生ローンの債務額が10万ドル以上の人は、借り手の6%。
・学生ローンの債務額が20万ドル以上の人は、借り手の2%。
・学生ローンの債務額が5000ドル未満の人は、借り手のおよそ18%で、学生ローン債務総額に占める割合は1%にあたる。

3. 学生ローン債務の大半は大学院進学のため

・学生ローンを借りた理由の大半は、大学ではなく大学院に進学するため。
・学生ローン債務の56%は大学院に進学するためだったことが、最新データから明らかになった。
・その56%のうち、約36%が修士号を、30%が専門職学位か博士号を取得している。
・一般的には、修士号・博士号か専門職学位を取得した借り手は、学士号だけを取得した借り手と比べて所得が多いが、必ずしもそうとは限らない。
・大学院に通った人は、経済的により安定している傾向がある。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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