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2020.11.04

日本でもダイレクトリスティングが始まる条件は、そろいつつある


ただし、最近では日本のスタートアップ市場も変わってきていて、これらの傾向が徐々に当てはまらなくなってきているように思います。以前なら、20億円以上の資金を調達するためには上場するしかなかったかもしれません。しかし、今は未上場市場でも普通に20億円以上のラウンドで調達が行われています。国内VCのファンドが大型化しており、上場株専門の投資家も未上場市場に参入しはじめています。日本のスタートアップに対する海外投資家の関心も次第に高まってきています。つまり、トップ層のスタートアップであれば、潤沢な資金源にアクセスできるようになってきているのです。2019年のスタートアップ資金調達額ランキングの上位10社を見ても、以下のように、ラウンドの調達規模が以前と比べて大きくなっていることがわかります(INITIALによる統計)。また、このランキングには書かれていませんが、実は多くのラウンドには海外投資家からの出資も含まれています(ちなみにCoral Capitalでは、コロナ禍がはじまってからも日本のスタートアップ投資に興味があるという海外投資家からの問い合わせが引き続き届いています)。



このトレンドが継続すれば、いずれ日本のスタートアップ界に以下の2つの変化が起きることが予想されます。まず、資金調達よりも株の流動性や市場での信用力をつけるための有効な選択肢として上場を考えるスタートアップが増えるでしょう。そして、未上場市場から資金調達するスタートアップも増加し、会社の規模が大きくなるまで上場を控えるようになると考えられます。より大きく成長してから上場するスタートアップが増えれば、きっと機関投資家もスタートアップを投資対象として真剣に検討するようになるでしょう。

ペンギンの群れの中で真っ先に海に飛び込む勇気あるペンギンのことを「ファーストペンギン」といいますが、ダイレクトリスティングに挑戦し、日本の「ファーストペンギン」になるのはいったいどんな企業でしょうか? 今のところ見当もつきませんが、個人的な予想としては、いずれ必ず誰かが挑戦するような気がします。ダイレクトリスティング特有の課題も出てくるでしょうが、基本的な要素は米国と似ているはずです。なによりも、スタートアップは昔と比べて多くの資金を調達し、規模も大きくなり、その価値が広く認識されるようになってきています。また、シニフィアンの村上さんも言っているように、スタートアップの経営陣たちも成長していて、資本市場に対するリテラシーが向上してきています。スタートアップにとって、上場の手法が多様化するために必要な材料はすでにそろっているのです。

文=James Riney

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