「政治・外交史」と「文化・産業史」は同時進行する
だから、一番いいのは自分で1枚の紙に「政治・外交史」と「文化・産業史」の重要事項を左右に並べて書き出し、「これとこれは同じ時代の出来事なんだ」を実視できるようにすること、という。
「そうすれば、たとえば正誤問題で『室町時代に運慶・快慶らによって「金剛力士像」がつくられ......』とあった時には、即座に違和感を持つことができます」
さらに野村氏によると、歴史は、イメージと流れを把握してから「物語」、「エピソード」を流し込んでいったり、政治と文化の関連を知れば覚えやすさにもつながる、という。
「政治と文化を左右に並べて『つながり』を把握してから、たとえば、室町時代であれば、次のように整理して覚えておくことです」
【政治史】足利義満(3代将軍) = 【文化史】北山文化
【政治史】足利義政(8代将軍) = 【文化史】東山文化
こんな具合に、政治、文化を対照させながら記憶すると覚えやすい、という。
「織田信長の時代には、キリスト教を受け入れ、仏教勢力と対抗したという内容は政治史で習います。そして、南蛮貿易も行い、楽市楽座や関所を廃止し、商工業の発展を奨励しました。その結果、華やかで雄大、仏教色はうすく、南蛮文化の影響を受けた桃山文化が生まれた、といった政治と文化のつながりを知れば、立体的なイメージが頭に残って、暗記するにも有利です」
ちなみに、たとえば野村氏自身が開発した歴史の教材には、1時代の「政治・外交」と「文化・産業」が1ページ内に対比されたもの(「コンプリートマスター」)がある。基本的に「1ページ1時代」構成だから、わずか本文13ページの凝縮教材だ。
筆者もわが子と一緒にテキストをのぞき込みながら、野村氏自身が講義するCDをともに聴いてみた。なるほど、1ページ内に、1時代の「政治・外交」と「文化・産業」が年表形式で説明されている。だから、江戸時代なら「5代将軍徳川綱吉の時代」と「元禄文化」がだいたい同タイミングで起きていることが実視体験できて、時代の雰囲気が時間の流れとともに体に入ってきた。聴いたのは時間が節約できる「倍速版」だったが、音声加工に工夫があるというだけあって、早口なのに聞きやすくもあった。受験生本人であるわが子にも「いろんなことが1ページにまとまっているし、流れがわかって便利かも」と好評だった。
野村氏はこう強調する。「社会という教科は暗記教科であり、自学自習が効果的な教科だからこそ、親子二人三脚で進めていきやすいのです。ポイントを絞った教材を使い、本当に入試に必要になってくるキーワードの暗記をしっかりと行えば、とにかく他の教科よりはるかに速く成績を伸ばすことができます」。
野村恵祐(のむら・けいすけ)◎愛光高校、慶應義塾大学商学部卒業。主な著書に『中学受験は社会で合格が決まる』(講談社)や、『中学受験 社会 合格への家庭内戦略』(小学館)、『中学受験 第一志望に合格したいなら“社会”の後回しは危険です』(ダイヤモンド社)など。参考:オフィシャルサイト、スタディアップ 公式サイト
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