コストをかけた「ネタ動画」
Duolingoユーザーは、SNS上でユーザーだけが分かる「内輪ネタ」を投稿する傾向にある。Duolingoのアプリは、しばらく学習していないと学習を促すプッシュ通知が届く。ユーザーはプッシュ通知を「Duolingoプッシュ」と呼び、Duolingoの公式キャラクターがフクロウであることから「フクロウが追いかけてくる」などと面白おかしく投稿する。
学習を促すプッシュ通知「Duolingoプッシュ」(Duolingoの動画より)
ネスラー氏はこうした「内輪ネタ」のジョークが、コミュニティの成長エンジンになると指摘する。「内輪ネタ」を生み出すために、Duolingoはスポーツジムやオフィスにまでキャラクターが追いかけてきて、学習を促す「ネタ動画」を自ら作成している。
Duolingoは、「内輪ネタ」を投稿してくれるユーザーを「モチベーター」と呼ぶ。「やる気を生み出す人」という意味だ。モチベーターをいかに生み出すかがコミュニティ構築のカギであり、だからこそ時間とコストをかけてまで「ネタ動画」を作った。炎上を避けるためにも「倫理観」は必要だが、日本企業にも参考になる取り組みだと感じる。
Duolingoのキャラクターがどこまでも追いかけてくる「ネタ動画」。こうした動画の制作は、モチベーターを生み出す取り組みの一つといえる(Duolingoの動画より)
コミュニティに必要なものとして、ネスラー氏は「目的」を挙げる。ブランドやコミュニティの「目的」を明確することで、より強固なコミュニティが生まれるという。また、「自治」「習得」「目的」のすべてがそろった時、コミュニティに「エンゲージメント(愛着)」が生まれるとも説明する。
Duolingoの取り組みはどれも労力のかかるものばかりだ。ネスラー氏も「コミュニティ構築はテクノロジーの力に頼るのではなく、とにかく努力することが大切」と指摘する。効率化を追求する昨今の風潮にあって、この「逆張り」は興味深い。
人がやらない面倒なことの先に成功がある。この気づきから、先人が残した「急がば回れ」の言葉を思い出す。
連載:世界を歩いて見つけたマーケティングのヒント
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