合成ダイヤモンドの需要が高まる中で、ティファニーをはじめとするジュエラーは、業界を悩ませてきたコンフリクト・ダイヤモンド(紛争地域で産出されるダイヤモンド)や持続可能性への懸念を払拭しようとしている。
創業183年の老舗であるティファニーは今年10月から、ダイヤモンドの産地や原産国、カット、研磨、グレーディング、品質保証、ジュエリーにセットされた場所が記載された鑑定書を発行する予定だ。
ティファニーによると、それぞれの石が加工されセットされた国を開示することは、世界のラグジュアリー・ジュエラーにとって初めてのことという。同社は昨年、ダイヤモンド・リングの原産国または地域を提供する最初の企業になると宣言していた。
20年前、ティファニーを含むダイヤモンド業界のリーダーたちは、コンフリクト・ダイヤモンドの追放を目的とする「キンバリー・プロセス」を採択した。そこでは、コンフリクト・ダイヤモンドが、「国家間の紛争の資金調達に使用されるダイヤモンド原石」と定義されたが、その定義はあまりにも狭く、人権や持続可能性への懸念を考慮していないと批判されてきた。
人権団体のヒューマンライツ・ウォッチは2018年、世界の主要ジュエリーブランド13社が責任を持って宝石や鉱物を調達しているかどうかを評価し、ティファニーがトップに立った。しかし、それでも報告書では「どの企業もダイヤモンドの個々の鉱山の原産地をすべて特定できていない」と指摘された。
ティファニーのエンゲージメントジュエリーの売上高は、2020年第1四半期に前年同期の2億8040万ドルから97%近く減少し、1億4250万ドル(約150億円)になった。また、総売上高は前年同期の10億ドル以上から45%近く減少し、5億5550万ドルになっていた。
ミレニアル世代は合成ダイヤを支持
調査企業MVI Industriesの2018年のデータでは、ミレニアル世代の70%近くが合成ダイヤモンドを使った婚約指輪の購入を検討するという。合成ダイヤモンドは、従来のダイヤモンドと同じ化学組成を持っているが、価格は抑えられている。
1930年代以前は、ダイヤモンドの婚約指輪でプロポーズする人はほとんど存在しなかったが、1947年にデビアスグループが行った「A Diamond Is Forever(ダイヤモンドは永遠に)」というキャンペーンが、このトレンドの起爆剤になったと言われている。
デビアスによると、1951年までには10人の花嫁のうち8人がダイヤモンドの婚約指輪でプロポーズされていたという。しかし、近年はデビアスでさえも、合成ダイヤモンドを支持しており、合成ダイヤモンド企業のLightbox Jewelryに9400万ドル以上を投資している。