退屈を忘れた人に必要な「空白の時間」と「エッセンシャル思考」

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私もニュートンを見習い、孤立した環境で本を書くことにした。平日は朝の5時から午後1時まで、8時間を本の執筆だけにあてる。午後1時になるまでは絶対に人に会わず、電話も通じないようにしておく。メールは自動返信に設定し、執筆のために隠遁中であることを伝える。

完全に達成できたわけではないが、それでも効果は抜群だった。想像以上の自由だ。考えることと書くこと。そのためだけのスペースを確保したおかげで、執筆が早く進んだだけでなく、生活のあらゆる面に余裕が生まれた。

そんなことか、と思うかもしれない。だが、最後にゆっくり座ってものを考えたのはいつのことだろうか。通勤中や会議中にぼんやり考えるのではなく、誰にも邪魔されないスペースで、考えるためだけの時間を過ごしたことが最近あっただろうか?

忙しいからこそ考える時間を確保する


刺激過多の現代にあって、考える時間を持つのは至難の業だ。あるビジネスマンは、ツイッターでこう言っていた。

「退屈ってどんな感じだったかな? 今じゃ退屈なんて皆無だ」

たしかに、彼の言うとおり。数年前までなら、空港のロビーや病院の待合室で、何もせずただぼんやりと退屈していることもあった。それが今では、誰もが携帯電話やパソコンの画面を見つめている。退屈しのぎが増えたのはいいことだが、退屈を駆逐した結果、考えるための時間さえ奪われているのではないだろうか。

ここで、ひとつの逆説的な事実。仕事が忙しくなればなるほど、考える時間を確保することがより必要になる。生活がノイズに満ちてくればくるほど、静かに集中できるスペースがより必要になってくる。

どんなに忙しい人でも、考える時間とスペースを確保することは不可能ではない。たとえば世界最大級のビジネス特化型SNSを展開するLinkedIn(リンクトイン)のジェフ・ワイナーCEOは、毎日合計2時間の空白をスケジュールに組み込んでいる。

その時間には何も予定を入れない。相次ぐミーティングに振りまわされ、まわりが見えなくなるのを防ぐためだ。最初はさぼっているような気分になったが、実践してみると生産性が確実にアップした。自分のための時間を確保することで、人生の主導権を取り戻せたと彼は言う。

「今でもよく覚えていますが、朝の5時から夜の9時までぶっ通しでミーティングをやっていた日があるんです。1日を終えたとき、すっかり消耗しきっていました。これじゃ仕事の奴隷じゃないかってね。でもそのストレスのおかげで、変わる気になれたんだと思います。その日までは、そういう感覚すら忘れていましたから」

彼は空白の時間を使って、本質的な問題を考える。3年後や5年後の会社の姿はどうあるべきか。サービスをさらに改善し、隠れたニーズを掘り出すには何をすべきか。競合企業に差をつけるにはどうするか。その時間はまた、自分の心を充電し、気持ちを切り替える場にもなっている。

ワイナーにとって、考える時間を確保することは単なるライフハックではなく、生き方の表明である。彼は仕事を通じて、多くの人や企業が欲ばりすぎて自分を見失うところを目にしてきた。彼はそうした生き方にノーと言い、自分の選んだ生き方を実践しているのだ。
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