米小売り大手のウォルマートは、同社が運営する診療所「ウォルマート・ヘルス」を、来年から新たにフロリダ州でも開設する計画を発表した。低額の医療サービスの提供を拡大し、大勢の顧客が利用できるようにする考えだ。
「基本的な医療サービスのスーパーセンター」として展開するウォルマート・ヘルスは、過去1年の間にジョージア州で3カ所、アーカンソー州でも1カ所オープンしている。ウォルマートの7月22日の発表によると、それらと同様にフロリダ州の施設も、プライマリーケア(一次医療)や歯科治療、メンタルヘルスサービスなどを提供する予定だ。
フロリダ州への進出では非常に大きな市場機会が見込まれる。ウォルマートによると、州内のウォルマートの店舗数は380店舗超と全米で2番目に多い。従業員数も合計で10万6000人あまりに上る。
開設する場所などの詳細は追って公表するとしているが、フロリダ州で最初にお目見えするのはジャクソンヴィルエリアになる見通しだという。
ウォルマートのヘルス・ウェルネス部門を統括するショーン・スロヴェンスキ上級副社長は、「質が高く、手頃な価格で、便利な医療サービスを広げていくことでインパクトを与えられる」とブログに書いている。フロリダ州はウォルマートにとって、十数年前にジェネリック(後発薬)を4ドルで販売する事業を始めた場所だったとも言及している。
米国で医療サービスへ参入する小売企業はウォルマートだけではない。ドラッグストア大手のCVSヘルスは、ヘルス・ウェルネス商品の品ぞろえを強化し、従来の簡易診療所「ミニッツクリニック」よりもサービスを拡充した「ヘルスハブ」を多数新設している。
また、同業のウォルグリーン・ブーツ・アライアンスも、医療サービスのスタートアップ、ヴィレッジMDに10億ドル(約1060億円)を出資し、医師が常駐する同社の診療所を全米のウォルグリーンの店舗数百カ所に併設する計画を発表したばかりだ。
とはいえ、ウォルマート・ヘルスは、CVSヘルスやウォルグリーンが手がける診療所の多くよりも2倍以上の規模を誇る。フロリダ州の施設が基にするというジョージア州ダラスの施設は約930平方メートル、ほかも630平方メートルほどの広さがあるが、ウォルグリーンの診療所は大半が300平方メートル強となっている。
スロヴェンスキは昨年のインタビューで、ウォルマート・ヘルスは「重要なヘルスサービスを1つの屋根の下」に置くものだと表現している。また、同社のモデルが機能するのは明らかだと自信を示しつつも、あらゆる世帯が確実に医療サービスを受けられるようにするには、やるべきことがまだあるとも語っている。