ビジネス

2020.07.22 17:00

「ヒューマンオートノミー」の社会実装で もっと人は自由に生きられる

連続起業家・投資家 孫泰蔵

ウィズコロナ、アフターコロナ時代の「これからの理想」をみんなで話そう。そして、ビジョンを再定義しよう。7月22日発売のフォーブス ジャパン8・9月号では「新しいビジョン」入門特集を掲載。これからの時代の「ビジョン」を考えるガイドブックを目指し、台湾のデジタル担当政務委員オードリー・タンをはじめ、世界および日本の起業家、経営者、Z世代の「これからの理想」を紹介している。

特集内から、国内外のベンチャー支援・育成に取り組む孫泰蔵氏が、コロナ禍で台頭する未来の産業と、それを担うスタートアップ6社を紹介する対談をお送りする。


孫泰蔵(以下、孫):僕は、時代を次の段階に進めるキーワードのひとつは「ヒューマン・オートノミー」だと考えています。産業革命以降、私たちの社会は、分業を進めてきました。水・電気・食事をはじめとした、生活インフラを購入することで生活しています。その機能が集まった場所が都市です。しかし、それでは災害やコロナのような大きな出来事があるとサービスが止まってしまう。社会全体が危機に晒されます。利便性はあるものの、非常に脆弱な社会構造になっているのです。

逆に考えると、生活インフラと医療、教育、仕事があれば、私たちはどこでも暮らしていくことができます。それらを私たちの手に取り戻して、自由で人間的な暮らしを実現するのが、ヒューマン・オートノミーです。

今回は、テクノロジーを通して、ヒューマン・オートノミーの実現を目指す起業家に話をしてもらいます。はじめに、LIFULL ArchiTech代表取締役の小池克典さんです。

小池:LIFULL ArchiTechは、快適で、安くて、どこにでもすぐに建つ家「インスタントハウス」という技術を開発しました。わずか数時間の工期で建ち上がる、断熱素材を硬質化したテントのような建物です。アウトドアレジャーはもちろん、難民キャンプへの提供や、プライバシーとウイルスに配慮した避難所など、多くの場面で活用できる技術です。今後はさらに、水や電気がなくて暮らせる環境作りに挑戦していきたいです。

テクノロジーの力で取り戻す


:コロナ禍をきっかけに、大都市に住む意味を考える人が増えたと思います。では、どこに住むか。彼らの技術を使えば、お気に入りの場所を転々とすることも可能になります。

次は、tsumug代表取締役の牧田恵里さんです。

牧田:スマートロックを提供しています。特徴は、アプリ上で鍵にアクセスすることで、初めていく所でも解錠できることです。これを使ってワークスペースを無人で貸し出すサービスも行っています。オフィスに行く、家にいる、と制約されず、選択肢を増やすことで自分の働く場を選ぶ。そんな未来をつくりたいです。

:tsumugが新しいのは、単にスマートロックの販売だけでなく、新しい空間のあり方を提案したこと。好きな場所に必要なときだけオフィスをつくれたり、近くで仕事ができるところを探すと「どうぞ」と鍵が開けられたり。新しい働く環境です。


LIFULL ArchiTech◎外形の三次元形状に加工した膜素材を膨らまし、その内側から空気含有量の高い軽量な素材を定着させることで、短時間かつ安価に断熱性や遮音性に優れた建物を作る技術「インスタントハウス」を販売する。東日本大震災で仮設住宅整備が遅れたことに着想を得る。名古屋工業大学から技術移転を受けた大学発ベンチャー。LIFULLのグループ会社として設立。

tsumug◎鍵の施錠を遠隔管理できるコネクティッド・ロック「TiNK」を提供。鍵の開閉を記録でき、防犯だけでなく、見守りツールとしても使用できる。その仕組みを活用し、マンションやホテルなどの空室利活用サービスを開発。福岡と東京を中心に、ワークスペースの開始だしを管理人不要で無人運営できるシステムを構築する。個人向けに「TiNK Desk」、法人向けに「TiNK VPO」を展開。
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文=揚原安紗佳

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 8月・9月合併号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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