牛の細胞を培養して作る肉も
肉を使用しないミートボール、ハンバーガー、ソーセージなどは、数十年前から世界中のスーパーマーケットで販売されています。これらの製品には、大豆、米、豆類、その他の野菜などが使用されています。
このような製品の課題は、味はどうあれ、その食感が肉に似ていないことにありましたが、3Dプリント技術を活用すれば、繊維を何層にも織り交ぜることで、より本物に近い食感を実現することができます。
一方、2013年には、オランダの食品科学者が別のアプローチを考え出しました。マーストリヒト大学のマーク・ポスト氏が発表したのは、研究室で牛の幹細胞と筋肉組織から培養して作ったハンバーガーです。生化学的レベルでは、彼のハンバーガーは通常のハンバーガーと同じもの、つまり肉組織からできているということになります。
しかし、それは動物を屠殺して得たものではありません。厳密にいえば、それは生きていた牛の肉や筋肉の繊維ではないのです。それを肉と呼ぶべきか否かは、哲学者が考えるべき問いなのかもしれません。
食肉に比べて植物由来の代替品の場合、削減できる資源とは (Getty Images)
少しの意識で大きな変化に
食肉産業は資源を消費するだけではなく、膨大な量の温室効果ガスを排出してきました。国連によると、標準的な食肉バーガーの生産と比べ、植物由来の代替品の生産においては、最大で、水の使用量が99%、土地の使用が95%、温室効果ガスの排出量が90%も削減できます。
肉に対する世界的な需要の高まりは避けられないでしょう。しかし、これらの懸念事項に対処するための短期的および長期的な変化も見られます。国連は、ミシガン大学が食肉代替品の生産者であるビヨンド・ミートに代わって実施した研究を引用しています。そこでは、アメリカ人が食べている平均で1週間に3つのハンバーガーのうち「ひとつを植物由来の代替品に置き換えるだけで、乗用車1200万台分の温室効果ガス排出量を抑制できる」可能性が示唆されています。
国際連合食糧農業機関(FAO)は、より持続可能な地球規模の食料供給を確保するためには、消費者の態度や行動に一連の変化が必要であるとしています。そこには、食品廃棄物への取り組みの重要性について、一般市民の間で意識を高めることも含まれます。現在、世界中で生産された食品の1/3は最終的にゴミになっているのです。
FAOはまた、食料生産と供給にかかる総コストを反映するため、食品価格の再調整も求めています。これには、土地の開墾、排出および汚染、水の消費による生物多様性の喪失も含まれます。そして同時に、裕福な国々における一人当たりの肉の消費量を削減することも提案しています。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
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