ビルの小さな贈り物はほとんどの場合、アダム・グラントが著書『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』のなかでビジネスマンのアダム・リフキンのものとして説明する、「5分間の親切」にあたる。親切をする側にとっては簡単で、負担もほとんどかからないが、受ける側にとってはとても大きな意味のあるものごとをいう。
アメリカの心理学者で『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』の著書、アダム・グラント(Getty Images)
グラントはレブ・リベルとの共著論文でこう書いてもいる。「成功するギバー(与える人)になるということは、誰にでもいつでも何でもしてあげるということではない。自らの負担より、他人を助けることのメリットが上回るかどうかを意識する必要がある」
これをうまくやる人を、グラントは「自己防衛的なギバー」と呼ぶ。彼らは「寛大だが自分の限界を自覚している。頼みごとにむやみにイエスと言わず、寛大な行動を楽しみながら持続できるよう、小さな負担で大きなインパクトを与えられる方法を探す」。
人を助けることと寛大であることは、本書で説明する愛とコミュニティの概念と直接結びついている。親友に頼みごとをされたら、もちろん聞いてあげるだろう? 友人を愛しているし、友人の判断を(たいてい)信用しているし、友人のためなら何でもしてあげたい。だから友人の助けになることで、友人が正しいと思っていることなら、ためらわずにする。
なのに相手が仕事の同僚になったとたん、話はそう簡単ではなくなる。手続きがあるから、不公平と思われるからなど、私たちが聞いてきたような言い訳が頭に浮かんでくる。だから頼みごとを聞いてあげない。
人を助けていいのだと、私たちはビルから学んだ。一肌脱げ。それが正しいことで、全員のためになるという確信があるなら、頼みごとを聞いてやれ。
(本原稿は、エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル著『1兆ドルコーチ──シリコバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え』〈櫻井祐子訳〉からの抜粋です)